ACSの全国大会では100年以上前から、科学における主要なブレイクスルーが発表され議論されてきました。 今年は、米国化学会 が5月18~22日にルイジアナ州ニューオーリンズにおいて、第255回ACS全国大会・展示会 を開催されました。 大会には世界中から 1万6千人を超える化学の専門家 が参加し、約8,200の科学論文、5,000のポスターと230の展示物を紹介されました。
ニューオーリンズを訪問できなかった方々のために、産業への応用が期待される最も興味深い新規研究のいくつかをここに取り上げます。
新たに開示された薬剤候補には潜在的な新しい癌治療薬も
ACS全国大会においては、毎回Division of Medicinal Chemistry(医薬化部会)が初回開示の臨床候補薬物についてのセッションを主催しています。 このセッションは、最新の医薬品開発情報に興味のある医薬品化学者にとってのメインイベントとなっています。
ニューオーリンズの大会では、AstraZeneca の腫瘍医薬品化学のアソシエートディレクターを務 めるIain Simpson(イアン・シンプソン)氏が、細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK1とERK2)の選択的阻害剤であるAZD0364の最近の発見について発表しました。 この新薬候補は、非小細胞肺がん(NSCLC)の動物モデルにおいて有効であることが示され、またある種の黒色腫の治療に使用できる可能性についても示唆されました。
良好なin vitro効能と選択性が、優れた物理化学的性質(最大最大吸収量は4g を超えると推定される)および多くの種に対する経口薬物動態によって強化されることから、人間に対する用量は低いと考えられています。
ニューオーリンズ大会において開示された潜在的な新薬の全11種 については、2型糖尿病やアルツハイマー病の新規治療薬の手書きの構造などを含めて、C&ENの記事をご覧ください。
場所を選ばず使用できる将来の電子機器に動力を供給する新しいポリマーフィルム
大会の期間中、科学研究は口頭発表やポスターセッションで、そしていくつかの注目すべき研究は記者会見において発表されます。 大会の3日目には、ACS Newsroom(ACSニュース編集室)がポリマーベースの新規素材についての記者会見を主催しました。
ケンブリッジ大学 の大学院生であるTiesheng Wang(テッシェン・ウォン)氏は、スーパーキャパシターとして機能する性質を備えた低コストの丈夫で柔軟なポリマーフィルムについて説明しました。 この新規素材は、イオン貯蔵ポリマーに縫合されて導電性ポリマーから構成され、キャンディケーン様の形状をしています。
この素材に基づくスーパーキャパシターは、「キャンディケーン・スーパーキャパシター」として知られており、スマート・クロージング、装着型や植え込み型の機器、そしてソフトロボットに埋め込まれる電子機器に動力を供給することが可能です。
この革新的な新規素材についての詳しい情報は、ACSニュースリリース をご覧ください。
水の再利用と脱塩のシステムの統合でより少ないエネルギーによる多くの水の生成
開会式では、5名の科学者が大会のテーマである「食物、エネルギーと水」に関連する主題について発表を行いました。 発表者の一人で南カリフォルニア大学土木環境工学教授である Amy Childress(エイミー・チルドレス) 博士は、水の再利用と脱塩のシステムにおけるエネルギー消費の最小化について発表しました。
この研究の最終的な目標は、2種類の廃棄物の流れと逆浸透を相乗的に活用することで、両方の流れを最大限に有効活用しながら、同時にエネルギー消費と環境への懸念を最小化させるための最良の方法を決定することです。
チルドレス博士はまた、C&ENが発行する ACS大会ガイド の「必見の発表者」にもリストされています。 この研究に関する詳しい情報については、技術プログラム をご覧ください。
大会や会議の数が増え続けて時間や出張予算には限りがありますが、学界と産業界の科学者の双方にとって新しいアイデアや機会を交換するために、これらのイベントにおいて発表される研究の認識は不可欠です。 今年旅行を計画中でしたら、マサチューセッツ州ボストンにおいて8月19~23日に開かれる 第256回ACS全国大会・展示会 への参加をご検討ください。
ニューオーリンズでの 第255回ACS全国大会・展示会 において発表された最新の研究については全て、SciFindern でご覧いただけます。