(ウェビナー)天然の脂質ナノ粒子、エクソソーム

Janet Sasso , Information Scientist, CAS

エクソソームに関するウェビナー

エクソソームは、患者のケアの在り方を変える大きな力として脚光を浴びており、がん、心血管疾患、組織再生など広範囲にわたる疾患に応用できるため、その可能性は計り知れません。 最近、Mayo Clinic、Direct Biologics社(ExoFloの製造元)、およびAruna Bio社の専門家が、2023年3月9日にCASのウェビナーに参加しました。

エクソソームは、よく天然の脂質ナノ粒子と呼ばれることがあります。その先天的安定性、低い免疫原性、生体適合性、組織や細胞への優れた浸透力といった明確な特性により、ナノ粒子よりも優れた面がいくつかあります。 エクソソームがなぜ将来の薬物送達や診断、そして治療状勢のあり方を変えることになるのか、詳細は最新のInsight Reportをお読みください。 

ウェビナーの主なハイライト

ジャネット・サッソ
ジャネット・サッソ

今回のディスカッションの導入として、まずジャネットにより、この新しい科学分野の現状説明がありました。 文献や知的財産のトレンドではエクソソームが台頭していることが示されています。しかし、より大規模な流通が実現するためには、解決しなければならない単離と精製での重大な課題が残っています。 臨床および前臨床の状勢を深く掘り下げることにより、エクソソームにおけるキープレイヤーやその技術、そして将来にむけて焦点が当てられている治療領域などが明らかになっています。

アタ・ベファール
アタ・ベファール、MD、Ph.D

ベファール博士はまず、自身の臨床研究の進展と、心臓治療へのエクソソームの応用について述べました。 そして、診療所やMayo Clinicにて、創傷治癒、心筋梗塞、女性の健康などの分野における再生治療を目的として、精製エクソソーム産物(PEP)がどのように研究されているか、詳しい説明がありました。 さらに、PEPが酸化ストレスと炎症を抑えるメカニズムと、そこにおける抗酸化酵素の含有量についても説明がありました。

ティム・モーズリー
ティム・モーズリー博士

モーズリー博士はまず、広範囲に及ぶエクソソームの生物学的プロセスなど、その複雑さに関して詳しい説明を行いました。 さらに、ExoFloというエクソソーム製品の広範な医薬品パイプラインについての話があり、それが急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や変形性関節症など、さまざまな疾患の治療に用いられていることを紹介しました。 最後に、ExoFloがARDS治療において、炎症性タンパク質の減少や免疫細胞集団の増加など、多くの有望な結果をもたらしたことにも言及しました。

スティーブン・スタイス
スティーブン・スタイス博士

スタイス博士からは、まずエクソソームの精製と濃縮における複雑さと、エクソソーム臨床材料のスケールアップのためにcGMP施設がいかに重要かといったことに焦点を当てた話がありました。 そして、治療薬を血液脳関門(BBB)を通過させるようにするための課題や、神経由来のエクソソームAB126の治療への応用についても詳述しました。 AB126には、中枢神経系への自然な親和性と高いBBB透過性があり、虚血性脳卒中後に脳組織を保持・修復する力があります。 最後に、AB126がsiRNAなどさまざまなカーゴを脳に運ぶのにも利用できることを説明しました。

ウェビナーのしめくくりに、参加者から幅広い質問が寄せられ、その中には脂質ナノ粒子とエクソソームの比較からはじまり、エクソソームの分離や精製、そして特性評価など複雑な質問まで登場しました。 まとめると、今回は、薬物送達やアンメットニーズの高い疾患の治療において、エクソソームは有望な可能性があることを確認することができた、充実したパネルディスカッションになりました。

ウェビナーの映像と関連スライドは、こちらでご覧ください。