(2021年11月4日更新 - 最近CDCおよびFDAによる案内の内容を反映しました)
自分の子供にCOVID-19ワクチンを受けさせるべきか
米国FDAとCDCは最近、5歳から11歳の子供に対してのファイザー/BioNTech製COVID-19ワクチンの接種を推奨しました。 現在までのデータでは、ワクチン接種は入院者数の減少に非常に効果的(90%-95%)であることが示されています。 SARS-CoV-2デルタ変異株が急速に増加したとしても、ワクチンはおおむね効果的であるようです。 2021年3月~8月のCDCのデータでは、ワクチン未接種の青少年の入院率は、ワクチン接種完了したコホートよりも10倍高かったことが示されています。
子供へのワクチン使用は安全でしょうか。
米国FDAの諮問委員会は、子供におけるファイザー/BioNTechワクチンのリスクを検討した結果、そのメリットはリスクを上回ると判断しました。 ワクチン接種者を対象にしたいくつかの調査では、まれな炎症性心臓病である心筋炎がモデルナおよびファイザー/BioNTechのワクチンで報告されているものの、COVID-19ワクチンによって引き起こされる心筋炎のリスク(1億3300万件のうち636件、0.0005%未満)は、COVID-19による子供の入院率(0.05%)よりはるかに低い数値になっています。 実際、5〜11歳の子供を対象としたファイザー/BioNTechの臨床試験では、アナフィラキシーや心筋炎の症例は報告されていません。
子供用と大人用のワクチンは異なるものでしょうか。
子供(5〜11歳)への接種は、青少年および成人用の1回分30マイクログラムの用量と比較して1回分10マイクログラムと少ない用量で行われました。 投与量が少ないにもかかわらず、16〜25歳のグループと比較して、5~11歳の子供は同等の免疫応答を示しました。 治験に使用したワクチンと元の使用したワクチンとのそれ以外の相違点は、pHの安定性を維持するための緩衝液のみです。
保護者向けのアドバイス - ファイザー/BioNTechワクチンの場合、その容器を確認すれば、子供が少量の適切な用量で接種を受けているかを確かめることができます。 用量の少ないワクチン容器は、容器に文字が印字されているほか、キャップの色がオレンジに変更されています。
2021年5月当時の記事
小児期の予防接種は、深刻な感染症に感染して病気になる前に子供たちに免疫を与える方法です。 天然痘やポリオなど、広範囲に標準化された小児ワクチン接種プログラムのお陰で、ほぼ完全に根絶された小児疾患も多くあります。 はしかやおたふく風邪、風疹、水痘、ジフテリアといった伝染性の高い病気などの予防接種は、医学的に禁じられていない限り一般的には子供が学校に通うために必須となっているものもあります。 しかし、FDAの緊急使用許可によって最初のCOVID-19ワクチンが子供向けに承認され、その他のワクチンも間もなくこれに続くと予想されている中で、保護者は子供にワクチンを受けさせるべきかどうか、またいつ接種すべきかについて重要な判断を迫られており、そしてそのために多くの人がCOVID-19の安全性、有効性、必要性に関する情報を求めています。 本ブログ記事では、入手可能なデータで12歳以上の子供向けのファイザー/BioNTech製COVID-19 mRNAワクチンの認可を裏付けているものと、その根拠となる科学に対して詳しく光を当て、最も一般的な質問に答えます。
COVID-19ワクチンは子供にも安全で有効ですか。
5月10日、米国FDAは、入手可能な安全性と有効性データに基づき、12歳~15歳の青少年を対象としたファイザー/BioNTech製COVID-19ワクチンの緊急使用許可を延長しました。 2020年7月下旬に始まった画期的な第3相臨床試験に、ファイザー/BioNTechは、大人用と同じ2回接種のプロトコルでCOVID-19 BNT162b2ワクチンを接種した、SARS-CoV-2感染歴のない12〜15歳の青少年2,260人を登録しました。 治験参加者のうち1,131人がワクチンの接種を受け、1,129人がプラセボの投与を受けました。 ワクチン接種グループに感染者はいませんでしたが、プラセボ接種者には18名の感染が見られました。 これらのデータは、ワクチンがこの年齢層で100%の有効性を発揮することを示しており、また血清抗体検査でも、以前の試験で検査された16〜25歳の年齢層で見られたよりも、この年齢層のほうがより強力な抗体反応を示しました。 この研究で報告された副反応は、他の年齢層で報告されたものと変わらず、また一般的に軽度でした。 従って、現在利用可能なデータに基づくと、ファイザー/BioNTech製ワクチンは12歳以上の人に非常に有効かつ安全であることが示されています。 ファイザー/BioNTechはまた、ワクチンによる長期的な影響がないことを確認するために、臨床試験を受けたすべての子供をさらに2年間追跡調査することを約束しました。 この治験の成功に続き、ファイザー/BioNTechは、生後6か月~12歳の子供を対象とした第1相臨床試験も開始しました。 モデルナも、同様の年齢層の子供たちを対象にしたワクチンの臨床試験を実施しています。 その他すべてのCOVID-19ワクチンは、現時点では18歳以上を対象としてのみ承認されています。
子供のCOVID-19ワクチン接種は本当に必要でしょうか。
2021年4月29日の時点で、米国小児科学会は、米国内で3,782,724件の子供のCOVID-19の症例を報告していますが、これはつまりCOVID-19の全報告症例数の13.8%が子供であるということを示しています。 子供は全入院症例数の1.2%〜3.1%を占め、COVID-19による子供の死亡率は0.21%でした。 このデータは、現在のところCOVID-19による子供の重篤症例は稀であったことを裏付けています。 ただし、子供にCOVID-19の予防接種を行う必要性を評価する際には、いくつか追加の要因を検討する必要があります。
感染した子供に対するウイルスの長期的な身体的影響はまだ不明です。 ただし感染した成人では、多系統炎症性症候群などの潜在的な長期合併症が確認されています。 同様の長期的影響は子供でも観察されています。 さらに、英国の変異株B.1.1.7は、子供の感染率が高いことを示しており、将来的にはリスクが高まる可能性があります。 パンデミックによる混乱が子供のメンタルヘルスと教育に及ぼす悪影響についても、詳細に記録が残されています。 結局のところ、必要性とは相対的なものです。 これまでの入手可能なデータに基づくと、大部分の子供たちにおけるCOVID-19感染による死亡または重篤な疾患のリスクは低いとはいえ、ワクチンを接種することでCOVID-19の発症および潜在的な未知の長期的影響からは子供たちをほぼ完全に保護できることが示されています。 またワクチン接種により、より高リスクの他の人に子供たちが感染させるという可能性を減少させ、自分自身と身の回りの大切な人が保護されているという心理的な安全性を高めるほか、全人口における感染状況の緩和と、可能ならば最終的な疾患の根絶に貢献もします。
子供と大人の免疫反応に違いはありますか。
子供と大人には、身体の大きさ以上の違いがあります。 子供の免疫システムは、新たな病原体への対処という点で有利な点がいくつかあります。 生後数か月間、赤ちゃんは主に母親から与えらた抗体によって感染症から保護されています。 これらの最初の抗体が弱まるにつれて、子供は多くの場合、あらゆる種類の微生物に対して感染しやすくなります。なぜなら、すべて自分の体にとって新しいものだからです。 従って子供の免疫システムは、新しい病原体に絶えず遭遇しているため、非常に活発な状態にあります。 SARS-CoV-2は子供と大人のどちらにとっても新たなウイルスであるため、子供の免疫系のほうが大人よりも効果的に反応し、病気と戦う可能性は非常に高くなります。
新しい病原体に対する子供の免疫反応の強さの向上には、影響を与える重要な要因が2つあります。ナイーブT細胞の数とそのT細胞の位置です。 子供には何百万ものナイーブT細胞があり、常に病原体を待っています。 新しい病原体に対するこのような自然免疫反応が、免疫獲得の第一段階です。 第二段階では、身体はメモリー免疫細胞の形で「記憶」を作成し、将来これらの病原体が侵入した際に反応できるよう備えます。 ナイーブT細胞は加齢とともに減少するため、子供が免疫獲得の点で大人より明らかに有利になっています。 またこれは、大人は反応できるよう備えているT細胞の数が少ないため、病原体に対する免疫反応を開始するのが遅いことも意味しています。 このナイーブT細胞は、それがどこにあるかということも子供のCOVID-19に対する強力な免疫反応に寄与しています。 Nature Mucosal Immunologyの2019年の記事によると、子供の場合ナイーブT細胞は血液内だけでなく特定の組織にも多いことがわかりました。 Natureの別の報告によれば、子供の場合、風邪の原因となるものなどその他のコロナウイルスへの曝露の機会が一般的には増えるため、SARS-CoV-2に対する免疫反応の速度も速くなるとしています。 これらの理由により、予防接種に対する子供の免疫反応および関連副作用は、成人に見られるものとは大幅に異なる場合ことがあるわけです。 従ってこの年齢層集団における安全性と有効性を証明し、適切な投薬と臨床プロトコルを最適化するには、子供を対象とした個別の臨床試験が重要となります。