有望なRNAiの知的財産保護と商業化
RNA干渉(RNAi)に関する特許情勢の価値が高まり、より複雑さを増すにつれて、知的財産を保護して価値を最大化するために必要な特許検索には特別な課題が生じています。 アメリカ食品医薬品局は、Alnylam Pharmaceuticalsが2018年に開発したOnpattro(Patisiran)と2019年に開発したGivlaari(Givosiran)という2つのsiRNA( small interfering RNA)分子薬を最近認可しました。 さらに、複数の治療分野において52のsiRNAの臨床試験が進行しています。 1990年代に作用機序が発見されてから、RNAiは小分子標的の識別と検証において重要な戦略のひとつとして研究が進められてきました。過去10年間に、1万2000件以上のRNAi関連の特許文献が作成されています。
RNAi分子には、miRNA(マイクロRNA)とsiRNA(低分子干渉RNA)という2つの一般的なタイプが存在します。 どちらもタンパク質をコーディングしない、ノンコーディングRNAです。miRNAは小さなRNA分子で、 標的のメッセンジャーRNA(mRNA)と結合することで遺伝子発現を抑制(サイレンシング)します。 以下のような機構があります。
- mRNA鎖の2つの部分への分割
- ポリAテールの短縮によるmRNAの不安定化
- リボソームによるタンパク質へのmRNAの比較的効率の悪い翻訳
アンドリュー・ファイアーとクレイグ ・メローは、RNAiを発見した功績から2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞しました。RNAiは転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)とも呼ばれ、疾患の根本原因を排除する全く新しい分類の医薬品開発の扉を開きました。 例えば、siRNA(低分子干渉RNA)は標的遺伝子の発現を選択的に抑制することが可能なので、疾患の進行速度を遅くしたり対症療法のみを行うのではなく、むしろ疾患の進行を止め、寛解に向かわせることができます。
この新しい科学の分野が登場し、新しい特許関連の課題と疑問が出てきました。 さらに、これら新分野の知的財産の特定と管理には、新たな検索スキルも必要となります。 RNAiの場合、質の高い検索を実行するには、複数の情報源の検索と、場合によっては馴染みのない検索手法が必要となります。
siRNA検索における課題には、次のようなものがあります。
- 標準化されていない用語
- 分子とは別に出願されている薬物送達
- よく知られている生物起源の検索方法における制限
これらの課題により、RNAi関連分子の特許検索には検索テクニックの専門知識と、関連特許と非特許文献を包括的に見つけるために検索手法を適用する情報源が必要となります。
RNAiに関連した課題と検索手法の詳細については、The Patent Lawyer Magazine の5月/6月号に記載されている拙著の最新記事をご覧ください。
RNAiに関する主な事実
RNAiは、特許においてはさまざまな形で出願されています。siRNAまたはRNAiの用語は必ずしも使用されておらず、また化学修飾もさまざまな方法で記述されています。 このような一貫性の欠如は、各種データソースから情報を効果的かつ包括的に取得するために使用可能な検索戦略が存在しないということを意味します。
RNAi関連の発明の出願および記述の方法が一貫していないため、包括的にRNAi関連技術の検索を行うには、配列の検索と文字検索を共に含める必要があります。 配列と文字列の両方の情報を使って人間が収集したデータベースと、アルゴリズムが収集したデータベースには、違いが存在します。 特許検索の典型的なワークフローでは、CAS BIOSEQUENCESTMなどの人間が収集した配列データベースの検索と、アルゴリズムを使用して収集した配列データベースの検索が行われます。 配列の検索に加えて、文字列の検索でも、CAplusSMなどの人間のキュレーションによるデータベースや全文特許文献データベースを検索する必要があります。
検索戦略を策定する際には、siRNAを記述する複数の方法(修飾二本鎖RNA、オリゴヌクレオチド、オリゴマー、RNA干渉、RNAiなど)を検討してください。 化学修飾については、特定の配列に留まらず、修飾パターンが出願されている場合があるので、そちらも検索が必要です。 出願は物質ではなく標的に関する場合もあります。どちらの場合でも検索が必要となります。 より信頼できる検索結果が得られるように、RNAiの検索ではsiRNA/miRNAの異なる特徴、用法、特性をカバーするようにしてください。 CAplusは収録用語の機能と精度を高めており、包括性を高め、複雑性を管理するお役に立つはずです。
上述の問題のため、RNAi関連の検索には困難が伴います。 RNAiに特有の複数の情報源と検索手法を用いた質の高い、専門的な検索を実行することは、科学的および法的な判断を下すためには不可欠です。
RNAiやその他の新たな技術分野に関する知的財産の検索にサポートが必要な場合は、 是非CASのIP検索専門家にお問い合わせください。