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かつて、売り場のカウンターは数え切れない化粧品の山で埋まり、そしてそれらをつけるためには延々と続く手順が必要な時代がありました。しかし、そんな時代は終わりました。 ペースの速い今の社会では、消費者はひとつですべてをこなせる商品を求めているのです。
多機能コスメの登場
保湿もアンチエイジングもシミ取り効果もあるスキンケア製品であれ、縮毛補正と傷んだ髪のトリートメントもできるコンディショニングヘアマスクであれ、消費者は化粧品に今まで以上のものを求めるようになっています。 ところが、こういった需要があると、化粧品業界としては、複数の事項をまとめて対処できる製品の開発をし続けなければならなくなります。
そこで、キトサンやリグニンを含む多機能成分や、ナノテクノロジーの利用などの新しい送達システムといった最新の開発動向を把握することにより、フォーミュレーターは、変化が激しく、高需要のこの市場に革新的な製品を提供し続けることが可能になります。
ヒーロー成分
化粧品業界において、多機能コスメの処方に利用できる優れた道具のひとつとして、いわゆる「ヒーロー成分」があります。これらの成分は複数の効果を同時に発揮するため、わずか数種類の成分で複数の事項に対処できます。
化粧品のヒーロー成分には、一般的に以下が含まれます。
成分 | ヒーロー特性 |
シアバター | 抗炎症作用 抗酸化作用 アンチエイジング |
ココナッツオイル | 皮膚バリアの修復 抗菌作用 抗炎症作用 抗酸化作用 アンチエイジング 創傷治癒 |
ナイアシンアミド | 抗炎症作用 抗菌作用 抗酸化作用 かゆみ止め |
カフェイン | 毛髪の成長促進 微小循環の改善 紫外線保護 抗酸化作用 |
プロポリス | 防腐作用 抗炎症作用 抗酸化作用 抗菌作用 創傷治癒 |
最小限に抑えた成分表や「クリーンコスメ」に対する消費者の関心が高まる中、ヒーロー成分は、化粧品のあらゆるニーズに単一成分で対処したいと考える人々に対して、売り込みやすいものとなっています。 これらの成分は処方の際に役立つだけでなく、その多くが「天然」または「クリーン」と見なされているため、マーケティング面で明確なメリットになります。
超強力なハイドレーター
ハイドレーターは、最も用途の広い化粧品の成分のひとつです。 この成分は、皮膚、髪、爪に潤いを与えるために用いられ、またそういった用途の多目的製品の開発にも利用されます。 ハイドレーティングセラムやオイルは、現在ハンドクリームやフェイス保湿剤、ボディ保湿剤、そしてヘアコンディショニングマスクなど、多くの製品をひとつで代替できる商品として販売されています。
このようにハイドレーティングつまり保湿の成分は、複数の身体部位を対象にできます。しかし、それだけには留まりません。 アンチエイジングや抗酸化作用、または抗菌作用などの多機能化粧品にも使用できます。 シアバターやココナッツオイルなどの植物油脂は、化粧品業界ではよく見られる候補成分です。 ところが、新たな研究で、キトサンという新規候補が見つかりました。
キトサンは、肌や毛髪に塗布することで保湿と保護効果をもたらします。 キトサンの効能には以下があると考えられています。
- 保湿性
- 皮膚軟化特性
- 抗菌性
- スキンコンディショニング
- 紫外線保護
- 抗酸化特性
驚異的な抗酸化成分
キトサンは抗酸化作用のある成分なので、今後はシアバターやココナッツオイル、ナイアシンアミド、そしてプロポリスなど他の化粧品の定番とされているものの仲間入りをすることになるでしょう。 各成分にはそれぞれ独自の多機能性があるため、抗酸化作用のある化粧品を処方する際には、広範囲な組み合わせが可能になります。
最近、抗酸化化粧品の候補として登場したものとして、リグニンがあります。 サトウキビなどの天然資源に由来するリグニンには特有の抗酸化活性があるため、化粧品への応用が期待されています。 2023年の研究では、リグニンがフリーラジカルを除去する能力は、化粧品の標準と比べて同じか、またはわずかに高いことが示されています。 この研究では、リグニンはUV保護だけでなく天然の化粧品顔料としても利用できることが示されたことから、将来のヒーロー成分としての可能性が浮き彫りになっています。
驚異的な日焼け防止効果
リグニンが持つUV保護効果の可能性は、その抗酸化作用に勝るとも劣らないと言えます。 強力なUV遮断剤であることが in vitroでも人間のボランティアに対しても証明されているリグニンは、UV保護効果のある多機能コスメにとって明るい将来をもたらします。 日焼け防止に関する助言が増加している中、消費者は皮膚に関する他の問題にも対処してくれるSPF(日焼け止め)製品を探すようになっています。
もうひとつ研究が進んでいるものとして、日焼け止めの配合にロスマリン酸を加えることが挙げられます。このロスマリン酸によって、抗酸化作用が加わるだけでなく、SPFが41%増加されることが示されているためです。 多機能コスメの処方を含んだSPFに対する主な障壁として、新しい成分によってその日焼け防止効果が損なわれてはいけないという点があります。そこでロスマリン酸のようにSPFだけでなく他の効果も増強できる成分は、フォーミュレーターにとっては絶好のチャンスなのです。
強力なシミ治療効果
シミケア用の化粧品には、多くの場合、肌の保湿や創傷治癒、または抗酸化作用など、複数の機能が求められます。 抗炎症作用と抗菌作用のある成分は、ニキビ跡のシミの原因対処に役立ち、また創傷治癒や皮膚バリアの修復をもたらす成分は、傷跡を目立たなくするのに役立ちます。 このように、シミケアの成分には、その主な効能の中ですら多用途性が求められるのです。
化粧品業界では広範囲に及ぶ抗菌や抗炎症成分が使用されているため、フォーミュレーターにとっても活性成分の選択範囲が広くなっています。 シミ治療には、アロエベラやウィッチヘーゼル、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、そしてレチノールなどがよく使われており、保湿剤などの製品に抗菌・抗炎症作用をもたらしています。
ただし、活躍しているのはヒーロー成分だけというわけでもありません。 その成分の送達が革新的な方法であれば、その効能と持続性を高めることができるのです。 最近、皮膚に接触すると有効成分がゆっくりと放出されるよう、化粧品の抗ニキビ成分をナノベースで送達するシステムが開発され、これにより抗菌作用と抗酸化作用が向上することが示されました。
究極の処方
消費者が化粧品の使い方をますます簡素化させている中、化粧品業界は、もっと高度で多用途な処方を作り出すという課題に直面しています。 より多くの効能を化粧品の処方に詰め込むためには、ヒーロー成分を最大限に活用することで、開発者はその目標を達成できます。そして、この多機能コスメという新しい波の最前線に、その製品を留めることができるようになるでしょう。
キトサンやリグニンといった有望なヒーロー成分の研究開発に投資することで、フォーミュレーターは製品開発を推進することができます。また、ナノテクノロジーを使用した新しい送達システムを採用することで、既存の成分から従来以上の機能性を引き出すことも可能です。 多機能コスメに関する最新の研究動向を把握しておくことにより、革新的な開発を継続的に支え、また化粧品に対して消費者が期待する限界を突破することにもつながります。
貴組織が究極の処方を開発するにあたり、CASがどのようにお手伝いができるかについては、弊社がCitrine社と提携し、AIを使ってデフォーミュレーションをいかにして予測したかの詳細をお読みください。