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コーティング剤は防水から装飾まで、あらゆる場所で使用されています。 しかし、再生不能なプラスチックから製造されるため、多くの場合リサイクルできず、また劣化してマイクロプラスチック汚染を引き起こします。 持続可能性と再生可能な資源を求める最近の動きに伴い、コーティング剤の設計者や製造者は、どのようにしたら再生可能な原料を製品に使用できるかを模索しています。
ただし、ポリマーはその一端でしかありません。 コーティング剤は、必要な質感や乳化を得るために、通常環境には危険な溶剤や化学薬品を使用して開発されます。 完全にサステナブルなコーティング剤を開発するためには、研究者はこういった環境への隠れた影響も排除する必要があります。
再生不能で環境に有害な素材がコーティング剤業界の標準になっている現状において、イノベーターは、どのようにしたら再生可能な素材を製品設計に取り入れることができるようになるでしょうか。
バイオベースポリマー
ポリマーは、ほとんどのコーティング剤の基材です。しかし従来は石油などの再生不能な原料に由来していました。 バイオベースポリマーは、よりサステナブルな代替素材です。 バイオベースポリマーは、植物や動物を原料とする再生可能な原料から作られます。これには、植物由来の油における技術的進歩を利用し、それを原料としたポリウレタン(PU)を製造するといった方法も含まれます。
植物油由来のPUは、従来の石油系PUを置き換えるクリーンな代替品で、従来の製品と同等の特性を有しています。 バイオベースのPUは、入手が容易でコストが低く、持続可能性も向上しているため、コーティング剤業界では一般的な選択肢となっています。 バイオベースのPUは、溶剤ゼロまたはUV硬化性など、環境に配慮した技術を組み込んで設計できるため、環境への影響のさらなる軽減が可能です。
2022年の研究論文では、ひまし油をバイオベースの原料として使用することで、高性能のコーティング剤が製造できることが実証されました。 動的妨害尿素結合を用いて、論文の著者らはヒマシ油から修復可能、リサイクル可能、除去可能な疎水性紫外線硬化型PUを得ることに成功しています。 この層には47%を超えるバイオベース素材が含まれており、またその分子結合の持つ動的性質により、修理可能性と溶接可能性、リサイクル可能性、そして除去可能性が示されました。 あるサンプルは97%以上のキズ修復能力を示し、少なくとも4回のリサイクルが可能でした。
その他の最近の研究では、いくつかの再生可能な原料を使用してコーティング剤が製造されていることが示されています。これには、以下が含まれます。
- • 藻類
- • 麻(ヘンプ)
- • 木材
- • デンプン
- タンパク質
急速に発展している研究分野であるバイオベースポリマーによって、よりサステナブルな製品を開発する可能性あふれるチャンスがコーティング剤メーカーに提供され、そしてその結果、よりグリーンな将来に向かって行くことが可能になります。
リサイクル可能なポリマー
再生可能プラスチックがもたらす可能性は、バイオベースポリマーだけではありません。 リサイクル可能なポリマーを使うことで、単一工程の中で廃棄物を削減または排除し、同時に再生可能な原材料を利用することで、持続可能性達成のための方法がもうひとつ増えるのです。 再生された原料は、循環性があるため再生可能な代替原料であり、よってリサイクル工程は高収率でサステナブルである必要があります。
これを実現する方法のひとつとして、剥離させて再利用することでリサイクルできるようなコーティング剤を開発するという考え方があります。 NASAのラングレー研究センターでは、ポリマーでコーティングされたエポキシ微粒子で、高温にすると原料に戻すことができる性質を持ったものを製造する技術が開発されました。 長距離宇宙ミッションにおける3Dプリンティングでは、再生可能な原料が不可欠であり、この素材はそういった用途のために設計されたものです。しかし地上でも幅広い応用範囲があります。
再生可能な循環性を持つ素材やコーティング剤が開発されれば、メーカーはコーティング剤を再利用するサステナブルな製品ライフサイクルを構築できます。 消費者にとってグリーンケミストリーの重要性が高まるのに伴い、コーティング剤の研究は、革新的技術のリサイクル可能性と、グリーン化を目指す市場にいかにアピールするかに焦点を当てることが必要です。
水性ポリマーディスパージョン
サステナブルなコーティング剤を開発するにあたり、ポリマーはさまざまな側面の一端を解決するに過ぎません。 従来のコーティング剤では、多くの場合、塗布・硬化には環境に有害で再生不能な溶剤を使います。 サステナブルな製品を作ろうとしているメーカーは、ポリマーの用途に加え、この部分に対してもイノベーションすることが不可欠になります。
水性コーティング剤は、環境的に中立であり、しかも再生可能な選択肢です。このため、繊維、紙、塗料に使用されることが増えています。 水性コーティング剤(水性ポリマーディスパージョン)の製造に用いられるモノマーには、さまざまなものがあるものの、どれも多くのバイオベースポリマーで有効な配合となっています。 これがあれば、メーカーはひとつの製品で2つの再生可能原料を組み合わせられるため、さらに持続可能性に近づくことができます。
界面活性剤と乳化剤
界面活性剤や乳化剤など、コーティング剤に含まれるその他の成分も、再生可能な原料から得ることができます。 デンプンと大豆は、ソープフリーの界面活性剤の原料として有効であり、コーティング剤配合の乳化にも成功しています。 デンプンは低コストで、入手可能性が高く、環境への影響も少ないため、開発者にとって人気の選択肢です。 また、ポリマーに直接グラフトさせて界面活性剤を使用しない乳化重合を行うこともできます。
不十分な界面活性剤を単独で使用すれば、セルロースナノクリスタル(CNC)は両親媒性のナノ粒子なので乳化の安定剤として使用できます。 木材パルプまたは綿などの再生可能なセルロース原料から抽出されるCNCは、開発者にとっては環境に配慮した材料を使って安定した乳化を行うためのもうひとつの方法になります。
サステナブルなコーティング剤の開発
再生可能な原料からサステナブルなコーティング剤を設計・製造するためには、配合のあらゆる部分について、その供給源、副産物、廃棄経路を考慮する必要があります。 環境に優しいコーティング剤を作るには、ポリマー、溶剤、界面活性剤、乳化剤のそれぞれの持続可能性の慎重な評価が必要です。 新素材を採用することで、メーカーは環境意識の高い消費者にアピールできるような、将来のグリーンケミストリーに貢献する画期的な新しい層を作り出せるようになるはずです。 バイオポリマーがいかに製造業のカーボン・フットプリントを減らしているか、および新たに登場しているバイオポリマーの状況に関してさらに詳しく知るには、弊社Insight Reportをご覧ください。