化学関連の会社やライフサイエンスの会社がCOVID-19の難局から得られた自社知的財産ポートフォリオの収益化を模索しているため、2021年は製品のライセンス契約、獲得、パートナー提携の増加が見込まれる1年となるでしょう。
適切なデューデリジェンス検索の実施は、このようなハイリスク・ハイリターンの商機に伴うリスクを軽減し、結果を最適化する上で不可欠です。 状勢の中で重要な情報を見落とすと、FTOや合法性検索が長年にわたる製品開発を危険に曝し、将来的には法的な争いに発展する可能性があります。
IPWatchdogの社長兼CEOであるジーン・クイン氏は、この課題について、CASとの最近のウェビナーで説明しました。「ライフサイエンスの分野、特に腫瘍学や細胞および遺伝子治療など多くの企業がしのぎを削っている分野では、企業が検索を始める際に、膨大な費用がかかっています。」
「ハイリスク・ハイリターンのIP検索には、時間と費用の両面で相当の投資が必要となる場合がありますが、それは妥当だと言えます。」と同氏は言います。 「このような検索はあらゆるM&A、新製品のライセンス、ポートフォリオの監査の費用便益分析を促進します。 機会逸失や訴訟は、キャリアや企業の評判にダメージを与える可能性があります。」
ウェビナーの際には、専門家委員会がクイン氏に加わり、デューデリジェンス知的財産検索のベストプラクティスに関する独自の視点を提供しました。 委員会には企業法務事務所Honigmanのパートナー兼特許関連リーダーであるハイディ・バーヴェン博士、Johnson & Johnsonのアソシエート特許顧問であるポール・コレッティ氏、およびCAS IP検索サービスディレクターのマシュー・マクブライドが参加しました。
デューデリジェンスの際に時間の浪費とエラーを回避して法的リスクを低減させる方法についてはウェビナーの録画全体をご覧ください。確固たる自信を持って重大な判断がくだせるようになります。
効果的な知的財産検索の基準を定める
効果的なデューデリジェンス検索は、数多くの重要な成功要因が存在する非常に複雑なプロジェクトとなります。 実施中は全体像を包括的に把握できるよう多くの段階、審査、改善を伴って、反復的に実施することが最善です。 また、このような検索では共同作業が重要です。特許、ビジネス、知的財産、検索の専門家が、明確に定義された目的と目標に向かってそれぞれの責任とプロセスをすり合わせることが求められます。
コミュニケーション不足、不完全または不正確な検索プロトコル、プロジェクト管理の不整合などが失策、ひいては事業の大失敗につながる可能性があります。 「怖いもの見たさというのは、誰もが持っているものですが。」とバーヴェン氏は続けます。 「実際のところ検索の世界では、怖い結果を見ることはありません。訴訟になって初めて気が付くのです。」
専門家委員会は、デューデリジェンス検索の際によく見られる4つの損害の大きい失敗を指摘しました。研究開発努力を脱線させ、投資機会の遅延をもたらす可能性がある失敗です。
- 最後から2番目の産物や化合物を見逃す。 通常は目的の化合物が検索の重点ですが、その近縁の活性のある化合物とその代謝産物を確認することも重要です。 標的の考慮において大切なのは、1つ前の化合物を確認し、それに活性があるかどうが判断することになります。 例えば、プロドラッグまたは中間生成物が活性を持つことがあります。 直近の代謝産物まで検索範囲を広げることも、将来の知的財産保護には不可欠です。
- 弁護士または検索担当者に不完全または不正確な情報を提供する。 元の構造が誤って提供されているため、検索担当者が違う化合物データベースで異形を探索することで、検索担当者が関連特許を見落とすことがあります。 構造の確認と検証は反復的プロセスの一部です。これにより、追加の検索に時間とコストを費やす前に、十分な自信が得られることになります。
- 公開されている文献の重要情報を注意深く検証しない。検索担当者は、明らかにしている構造が既に保護されているとわかる場合があります。 これは危険信号ですので、チームに正しい構造を確認していることの検証を促すことになります。 続行する前に、検索担当者は詳細まで調べ、特許出願の経過資料をチェックして、その名称が実際に構造または構造番号と関連性があるか確認します。そうでない場合、検索は見当違いになります。
「あり得ないと思うような失敗でも、起こる可能性があります。」とバーヴェン氏は言います。 「構造が未公開だったり、公開済みでも間違っていたり、自明性による棄却を克服するための訴えの際、4回目や5回目の米国における継続出願の経過資料で初めて公開されたりするといった状況を経験してきました。」 - ディリジェンス審査を軽視する。 些細なことが、大きな問題につながる場合があります。検索担当者は先行技術を見つけても、特許申請日やプロファイリングの日付の再確認を怠ることがあります。 誤字や脱字、広範囲すぎる検索の設定だったりします。 不正確性を回避する方法は、特許申請すべてを落ち着いて再確認することです。 デューデリジェンスチームの全員が、確実なチェックアンドバランスを行い、人為ミスを減らす責任を負います。これは単純なミスによる時間と人員の無駄を排除するには、当然必要なプロセスです。
少ないストレスで機会を得るには
幸運なことにデューデリジェンスの失策の大部分は、繰り返しのチェックアンドバランスを確実にする責任を明確に定義し、共同作業プロセスを確立することで回避できます。
「知的財産は常にパートナーシップそのものです。」とCASのマクブライドは述べます。 「全員がそれぞれ役割を担い、しかも同等に必要な役割です。 より大きな責務を負う人は専門知識を持っている人に管理をゆだねることもできます。この作業には信頼が必要なため、最高のチームの人間関係を何年もかけて構築しているのです。」
ストレスを回避して機会をしっかり掴むには、以下の3つの戦略を採用します。
戦略1:すべてを社内で実行しようとしない
多くの組織は社内に技術的および法的な専門知識を持つ人材を多数抱えており、検索を社内の法務および科学の専門的人材に任せようと考える可能性があります。 このような専門家は科学の特定分野または特許法を専門にしているかもしれませんが、複雑極まるデューデリジェンス検索の専門家ではない可能性があります。
「高度な検索担当者と共に作業した後では、彼らが使用する複雑なデータベースで高品質な検索をと、私ができるとは思えなくなりました。」とバーヴェンは話します。
検索については、何でも適用できる方法は存在しません。 賭けが大きくなればなるほど、検索に必要な精度は高くなり、それには専門的人材が必要になります。
「企業と法律事務所は、不明瞭な特許情報と参考文献を見つけられる検索担当者を求めています。 専門の特許検索スペシャリストは、広範囲にわたる市販されているテクノロジーとリソースを随時使用して、コストを不必要に上昇させることなく、より高い精度で迅速に検索を完了させることができます。」とマクブライドは言います。
優れた検索担当者は、執拗に質問を行い、見つかった全ての結果を再確認し、チーム全員とスムーズな意思疎通を行い、さまざまな手段を用いて、特許情報のすべての情報を明らかにします。
戦略2:透明性の高い共同作業プロセスを構築する
重要度の高い効果的なデューデリジェンス検索プロジェクトには、会社内外の弁護士、知的財産管理、ビジネス管理、研究開発、検索の専門家との間の共同作業が必要です。
「成功と協力の程度には直接的な関連性があります。」とクイン氏は述べます。 「それぞれのチームは専門知識をバランスよく備え、明確に方向性を一つにし、透明性があり正直に討論できる環境を促進する必要があります。」
検索を求める者、検索を実行して情報を整理する者、ビジネス上、法律上、知的財産関連の判断に検索の結果を利用する者との間には、深いレベルでの意思疎通が求められます。 チーム全体が、何を発見する必要があるのか、どんな情報を見落としてはならないのか、検索の目的を明確に理解しなければなりません。
Johnson & Johnsonのコレッティ氏は検索パラメータに疑問を持ち改良を続けるというチームの義務を取り上げました。「何を探そうとしているのか。 可能性のある分子の検索で重要なのは何か。 分子全体か、 特定の成分か。 このような疑問に対する回答を明確にしておくことが、最善の検索構造につながります。 しかし、科学者たちも検索の精度を高める質問に答えなければなりません。重要なのは何か。 何を変更できるか。 ない場合に、どうすることが可能か。」
豊富な知的財産サポートを有する大企業はこのような疑問への回答に慣れていますが、小規模の企業の経営者は通常慣れていません。 日常的な決定を促す研究活動からかけ離れているように感じられるため、知的財産の価値を正しく理解できない場合があります。
「技術関連の企業の経営者と話し合う際には、知的財産管理は生涯の仕事における投資だという点を強調しています。」とマクブライドは言います。 「企業の経営者が、選択するパートナーおよび使用するリソースのいぜれにおいても、知的財産についてこの理解を深めると、視点も大きく変わります。 今後何年もの成功を左右ことになるため、投資の重要性も高まります。」
戦略3:プロセスを成果への手段として重視する
デューデリジェンス検索は反復的に行われ、情報が見つかるたびに進化します。 ビジネス面のニーズ、重要性、予算面の考慮が検索の範囲と設計に影響を与えます。
「最初は、複数の分子や送達手段を探そうとして、広範囲にわたる検索を行うため、検索が集中に欠け精度が低いものになります。」とコレッティ氏は言います。 「IPO前やIPOの段階にある企業にとって、ライセンス契約の機会は一番の関心です。ですから検索の強化は投資可能性の評価に役立ちます。 研究開発が進み、ライセンス契約した生物薬剤と第II相候補薬と結び付けるたいと考えている場合、他社の特許を侵害することなく特許取得できるかどうか、検索を確実に実行すべきです。」
デューデリジェンスが進むと、新たなデータが発見、評価、検討されて、検索プロセスの方向性が変わる可能性があります。 この活動は、質問と懸念にすべて回答が得られたとチーム全員が満足するまでやめるべきではありません。
デューデリジェンス検索は反復的なものであるため、コストの管理には困難が伴う場合があります。
「コスト面を元に検索結果を提供するのは危険です。手順を追って実行する必要があります。」とコレッティ氏は述べています。 「こうすれば、限定的な価値しか生まない制限された検索に膨大なコストを費やすことはありません。」
知的財産検索の有効性を高める
知的財産の収益化に向けたプレッシャーが高まっている複雑で革新的な業界にとって、デューデリジェンス検索はリスクを低減し、ライセンス契約、獲得その他のビジネス上の処理に対する大きな自信となりますが、それも十分な計画と注意深い実行があってこそです。
信頼できる法務アドバイザーと知的財産検索スペシャリストのチームを構築し、反復的な共同作業プロジェクト戦略を開発することで、時間の無駄を避け、エラーを回避し、法務リスクを低減できます。また、自信を持って重大な判断を下すことができます。
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