生物製剤(バイオ医薬品とも呼ばれる)は、21世紀における最も有望な新薬の分野として知られています。 医療に革命をもたらすと予測されている生物製剤は、主に、遺伝子組み換えの技術、あるいは生物学的供給源からの分離により生成されている製品です。 強い薬理学的活性、低毒性および標的分子に高い結合特異性を持つことから、癌、免疫疾患、炎症および内分泌学をはじめとする多くの分野にわたって驚異的な注目を集めました。
最近のバイオテクノロジーの飛躍的進歩と相まって、その非常に高い関心度から大手製薬会社は、新しい生物製剤の開発に多額の投資を促されてきました。 米国の市場調査機関、EvaluatePharmaによる最近のレポートが、この点を強調しています。 報告書では、2018年の世界のベストセラー医薬品トップ10のうち8つは生物製剤が占拠、2025年の生物製剤のグローバル市場は3995億ドルに成長するものと予測し、この分野における商業機会にも注目しています。
このブログ記事の執筆者でCASの科学情報マネージャーであるCynthia Liu氏によると、この分野の開発は有望で急速に発展しているため、発展に応じた投資、リソース、および時間を割り当てるという状況に遅れないようにすることが課題となっています。 新たなトレンドを明らかにするために、私たちは中国のACS インターナショナルのマネージャーであるCaroline Ma氏と共に、CASと中国科学アカデミー(NSLC)の国立科学図書館が共同で分析したホワイトペーパーを作成しました。 ここでは、この分析結果を使い、生物製剤で最大の4分野(抗体医薬、遺伝子治療および細胞治療、ワクチン、治療用融合タンパク質)における状況について説明します。
生物製剤のグローバル市場のトレンドとは。
世界の生物製剤市場全体を見てみると、過去30年間で劇的に拡大したことがわかります。 この点を強調すると、CASによって登録された生物製剤の数は300倍以上も増加し(下のグラフを参照)、研究成果も着実に増加、公開されジャーナル論文と特許出願も共に増え続けています。 製薬/バイオテック企業がCAS Registration Number識別子と索引名を要求した過去5年間の生物製剤の数は、その前の過去5年間に比べ2倍以上に増加しました。
さらに深く掘り下げると、生物製剤の研究開発に関与する主な国々において、その研究成果には大きな違いがあります。 米国は強力なリーダーで、5年毎に見ると最も多くの学術論文と特許を生み出している一方、中国も急上昇中です。 2008年以来、中国の学術論文と特許の数は米国に次ぐ2番目となっています。 日本、ドイツ、イギリスの学術論文と特許は、緩やかながら着実な成長を見せています。
メジャープレイヤー間の特許フローのパターンについて下図をご覧ください。 全般的に米国、 日本、ドイツは全体的に技術輸出の状態にあり、中国と韓国は輸入の状態にあります。 生物製剤市場の主要プレーヤーである米国は、特に興味深い特許の流れ方を示しています。 30年間以上もの間、米国は1万1742件を超える特許を日本に、6355件を中国に、4660件を韓国に、そしてドイツにはわずか72件を輸出してきました。 このような国間の特許の流れの不一致により、この市場におけるイノベーションや研究開発の複雑なパターンを理解するためには、データをある程度詳細に調査することがいかに重要かがわかります。
世界市場の洞察は、学者、企業、投資家の双方にとって非常に価値があります。 世界中の市場の成長パターンを分析することで、有望な共同研究者を特定したり、研究不足の分野を発見、開発すると共に、時間やリソース、資金、エネルギーをどこに投資するかについて、より詳しい情報に基づいた意思決定を下すことができます。
投資にとって最も魅力的なのは、どの生物製剤市場の分野か
生物製剤の適用範囲が拡大し続ける中、投資の新たな機会を特定するのに役立つのは、市場分野の成長の差を見極めることです。 例えば、この分野が成熟するにつれて、焦点は抗体および予防ワクチンから多岐に分かれ、組換えタンパク質薬物、腫瘍ワクチン、遺伝子治療および細胞治療(例えば幹細胞)が含まれるようになりました。
私たちの分析は、どの分野が最も投資を受けているか、どの分野が最も急速に成長しているかなどについての洞察を提供しています。 興味深いことに、研究の焦点が広がったにもかかわらず、最大の治療分類はいまだに抗体です。 これらのうち、最も研究されているのはリツキシマブで、これは非ホジキンリンパ腫と慢性リンパ性白血病の治療に適応されるモノクローナル抗体です。 一方、最も広く研究されている疾患分類は腫瘍で、乳癌はこの分野で最も多く研究されている疾患です。 文献をさらに詳細に調査すると、多くの物質と疾患の間の興味深い関係、ならびに新たな有望な薬物の応用が明らかになる可能性を秘めていることがわかります(物質と疾患の関係ヒートマップをホワイトペーパー全文でご参照ください)。
生物製剤の展望
最近の生物製剤部門の爆発的な成長は着実に続いており、これらの治療への適用は、癌治療における第四の主要な方法(外科、化学療法および放射線療法の確立されたアプローチと共に)としての認知度が高まっています。 個人向けに特化した治療として適していることから、生物製剤は精密医療の開発においても重要な役割を果たします。これは、研究者、医者、投資家、製薬会社にとってもう1つの重要な焦点です。
生物製剤の可能性を予測し、十分に活用するためには、この複雑な市場の煩雑性を理解することが重要です。 CASおよびNSLCが作成したホワイトペーパーをダウンロードして、上位4分野の生物製剤に関する包括的な市場概要をご覧ください。
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