治療用融合タンパク質は、組換え遺伝子やタンパク質エンジニアリングテクノロジーにおける急速な進歩のお陰で、有望な分野のバイオテクノロジー製品として浮上してきました。 1998年に初の融合タンパク質治療薬であるエタネルセプト(Enbrel)がFDAに承認されて以来、現在では融合タンパク質治療薬の売上高はバイオ医薬品の上位4つの分野の1つとなっています。 実際、融合タンパク質の世界全体の売上高は年間約6%の割合で成長しており、2025年までにその市場は推定240億ドルに達すると予測されています。
このブログの寄稿者でもある情報科学者のインツー・リー博士によると、 患者への医薬品の提供を加速させるための革新的な取り組みを求めている企業は、この分野における急速な発展に乗り遅れないようにしなければならないと述べています。 CASは、国立科学図書館、中国科学院(NSL)と共同で、治療用融合タンパク質の全体像を把握し、最も有望な機会を特定できるように設計された治療用融合タンパク質についてのホワイトペーパーを作成しました。 ここでは、この有用なリソースからの注目すべき点とその洞察について取り上げ、貴社ビジネスが競争上優位な立場となるには、これら情報がどの様に役立つかについて説明します。
世界における治療用融合タンパク質の研究開発はどう進化しているか。
過去30年間で、融合タンパク質の研究開発はかなり成長しました。2017年末までには、治療用融合タンパク質のトピックに関する特許出願は5万164件、論文は1万2198件も発表され、特にこの数年間で特許出願の件数は著しく増加しました。 米国は学術論文の出版数や特許件数でこの分野をリードしていますが、中国やドイツ、日本、イギリス、そして韓国もトップレベルの貢献をしています。
イノベーターにとってこれは何を意味するのでしょうか。 公開されている特許数に対する洞察を得ることによって、発展が見込まれる市場の分野をはじめ、イノベーションの減速が示唆されている分野、そして今後イノベーションの潜在的機会がある分野などを特定することができます。 国別に発表された調査を見ると、潜在的な地理的ホットスポットを特定したり、市場参入の方法、共同開発によるアイデアの発展、または優秀な人材を誘致できる場所となるなどの戦略プランに役立ちます。
主な融合タンパク質技術は何か、またそれをどう適用するのか。
現在治療用融合タンパク質が多くの研究開発の関心を集めている最大の理由の1つに、タンパク質およびペプチド薬物の寿命を延ばすことができることがあります。 生物学的に活性なタンパク質またはペプチドを半減期の長いタンパク質と融合させることによって、その結果できる融合タンパク質は元の薬物よりも著しく長い寿命を持つことができます。 以下をベースとするものも含め、広範囲の融合技術が開発されてきました。
- タンパク質/ペプチド薬と抗体Fc フラグメント(すなわち免疫グロブリンフラグメント結晶化可能領域)との融合
- 組換え血清アルブミンとの融合
- トランスフェリンとの融合
- カルボキシ末端ペプチドとの融合
- XTENとの融合(タンパク質とポリマーの両方の特徴を持ち、同じ分子量の球状タンパク質よりも大きなサイズの組換えポリペプチド)
- ELP(エラスチン類似ペプチド)との融合
CASに登録の融合タンパク質に基づく分析では、Fc融合がはるかに幅広くアプローチであることがわかりました。 興味深いことに、ほんの数年前に開発されたばかりの最新のXTEN技術がもうそこまで追いついているようです。 小規模なバイオテクノロジーの会社か、あるいは大規模な製薬会社であるかにはかかわらず、研究開発のトレンドや最大のインパクトをもたらしている技術に関する知識が、競合他社の優位に立つ機会を見極めるのに役立つかもしれません。
融合タンパク質医療薬の次の大きな期待は何か
融合タンパク質の魅力の部分は、複数の標的と相互作用するように設計できることから、疾患の発症に関わる2つ以上の異なる経路に同時に効果を期待できる点です。 二機または多機の特異性を有する融合タンパク質を構築する能力には特に引きつけられるものがあり、進行中の治療用融合タンパク質の研究開発の主な焦点となっています。
治療用融合タンパク質中の二重特異性抗体の標的医薬の分析において、最も幅広く研究されている二重特異性抗体標的は、CD19およびCD3、インターロイキン1αおよびインターロイキン1β、ならびに上皮成長因子受容体およびCD3であることがわかりました。 治療用融合タンパク質ホワイトペーパーでは、半減期延長成分、活性成分、標的(または二重特異性標的)および作用メカニズムに関して、最も一般的に研究されている融合タンパク質を特定しています。 また、融合タンパク質の開発に使用されてきた革新的戦略についてもその概要が述べられています。 これらの知識を総合すれば、貴社ビジネスが治療用タンパク質の状況をより完全に理解する助けとなり、成長のための潜在的な機会(ならびに既に競合他社から最も注目を集めているターゲット)を特定することができます。
融合タンパク質は将来どのように適用されていくのか。
現在、治療用融合薬の主な適応症には、炎症、免疫疾患および筋骨格系の症状などがあります。 しかし、融合タンパク質はそれ自体が薬として使用されているだけでなく、遺伝子治療や細胞治療にも刺激を与えています。 例えば、キメラ抗原受容体T細胞療法を見てみましょう。癌患者のT細胞がキメラ抗原受容体を含むように再操作し、これを患者に注入して癌細胞を特定し殺します。
この戦略の初期の臨床の成功を考えると、融合タンパク質を適用したさらなる革新が今後何年かで出現する可能性が高いと思われます。 適切な科学的検索ツールを使用して治療用融合タンパク質と疾患適応症との関係を特定すると、これらの薬が最大の機会をもたらす分野を認識することに役立ちます。
研究開発の洞察力の欠如で、融合タンパク質薬の最大限の治療効果を最大限に引き出す能力が妨げられてはいけません。 ホワイトペーパーをダウンロードして、急速に拡大するこの市場の全体像をご覧ください。