リーダーシップのスキルによって、科学者が研究以上の役割を担えるよう向上させることはできるでしょうか。 サイエンティフィック・アメリカン誌の論説では、「世界をよりよくするためには、今よりも科学の影響力を強化させ、そして科学を世界全体へと統合させる科学リーダーが必要」としています。
リーダーシップのスキルを備えた科学者は、プロジェクトをより効率的に完遂させ、ビジョンを設定し、イノベーションとコラボレーションを培い、組織の目的を達成する為に他者の意欲を高めて巻き込むことで、研究組織を助けます。
成功できるリーダーはもとより、科学者が生産的な研究者となるには、何年もの特別なトレーニングが必要です。 研究分野で影響を与えられるようになるには、つまり科学コミュニティーでのインフルエンサーになるには、科学者にリーダーシップスキルが必要です。これは学校教育では焦点を置かれず、また職場で身に付けることも困難なものです。
成功できる科学者は説得力を持って研究を説明できる必要があり、多くの助成金申請者の中から自分を差別化し、他の科学者や科学者ではない人に対して自信を持って研究について話すことができる必要があります。 これらのスキルは学術的な環境において重要視されるだけではなく、成功できる研究チームの設立運営にも必要です。
CASのリーダーシップ開発支援方法
2010年にCASは、科学者の専門スキルの拡大を手助けする国際アウトリーチ計画を発表しました。 CASのSciFinder未来のリーダープログラムは、若手の多様な科学者を集め、10日間のリーダーシップトレーニング、化学情報企業に関連するネットワーキングとイノベーションに招待します。 プログラム中は、様々はトピックが入り混じることで、参加者が大きな科学カンファレンスで自身の研究を発表したり、影響力の大きな雑誌に論文を発表したり、国際的なコラボレーションをするきっかけとなり、最終的にはその分野のリーダーになれるのです。
近年、参加者がリーダーシップトレーニングへもっと焦点を当てたアジェンダへの関心を示し、これが未来のリーダプログラムとなりました。 このようなフィードバックの結果として、今年はリーダーシップに焦点を当てたセッションが新しくいくつか追加されました。 ここでは、スピーカーと今年のプログラム参加者のツイートからの重要点など、4つのセッションを取り上げます。
業界におけるキャリア進歩に不可欠な要素
早い時期でのキャリアの成功はリーダーシップへの土台作りとなることが多いものです。 今年の参加者は組織がいかに能力を評価するか学びましたが、さらに重要なことに、表舞台に上がってきているリーダーを見極めてキャリア開発に繋げる方法を学びました。 Kenilworthのエグゼクティブ・ディレクターでMerck&CoのExternal Discovery Chemistryの代表であるジョセフ・L・ダフィー博士は、商業環境におけるリーダーシップと能力開発について話しています。
高い能力を持ったグループの方々と、そのキャリアの早い段階において交流できたことは素晴らしい経験でした。 私は、自身のチームで昇進の際に評価する3つのポイントについてお話ししました。 それは以下の通りです。
- マインドセット - 学習したいという考え方は、固定的な観念よりも優れているということ
- 熱意 - 熱意を受け止める側よりも熱意を放出する側の方がよいということ。そして
- イニシアティブ - 消極的になるよりも積極的なほうがよいということ。
@CASChemistryでの#FutureLeaders18へ対する@MerckのDiscovery Chemistryのエグゼクティブ・ディレクターであるジョセフ・ダフィー博士による素晴らしいスピーチ。 前人事部長の観点から見る産業界への求人応募の際の本当の「ワンポイントアドバイス」についての非常に魅力的な議論。 是非より多くの情報を共有したく思います!
— Martine I Abboud(@MartineAbboud) 2018年8月16日
@MerckのJoseph Duffy氏からすばらしいお話がありました。 @CASChemistry@SciFinderの採用マネージャーの時の体験から、賢い就活のアドバイスを頂きました。#FutureLeaders18 ハイライト:カバーレターは重要です!!! #RealTimeChem #realtimejobsearch @MerckIMInspired
— Julian West(@pushingarrows)2018年8月16日
科学界でリードする
科学のアジェンダの世界的な進展におけるリーダーシップの観点から、米国科学協会の教育部門担当執行副社長のLaTrease Garrisonは、どのような組織であれ成功するリーダーになるためのヒントを含め、彼女個人の歩みを話してくれました。
- プロの世界へ飛び込み、一翼を担う
- 自分の中心にあるリーダーシップの質を高める
- 強みを強化
- 協同の機会を探りましょう
- 革新する能力を実践しましょう
- 積極的になり、受け身になるのはやめましょう
- メンターを見つける
- 権限に頼らず主導する
企業や他多くの組織環境において「傑出したリーダーを見分ける特徴」についても触れています。これには、個人の能力、対人能力、結果重視、明確な方向性の設定、包括的なキャラクターコンピテンシー、コアのリーダーシップコンピテンシーの領域としてACSが認めるすべてのものが入ります。
LaTrease Garrison教育担当VP執行副社長から、 プロの世界でリーダーシップ能力をどのように開発できるかについて、ちょうど話を聞くことができました。
— Madison Fletcher(@madihfletch) 2018年8月14日
たとえ責任者でなくても、自分が所属するグループが何であれ、リーダーになり得るのです。 「権限に頼らずに主導しましょう。」@SciFinder @AmerChemSociety pic.twitter.com/QvtXPVUxZo
科学教育と通信手段におけるリーダーシップ
科学におけるリーダーは、学会誌や特許ばかりではなく世論の中でも、自己のフィールドを促進させる責任があります。 教育、メディア、さらにはソーシャルメディアにより、科学のアジェンダの理解や受容の推進を促すことが可能です。 科学産業センター(COSI)のプレジデントおよびCEOであるFrederic Bertley博士からお話を頂きました。
今日の私たちは、主に安価な通信ツールの偏在性のお陰で小さくなりつつあるグローバル社会に住んでいます。 同時に、すべて科学者やエンジニアの賜物ともいえる科学と技術に明白に依存しているこの同じグローバル社会は、科学的なリテラシーをますます失いつつあります。
この社会こそ、科学者やエンジニアの次世代が拡大する重要な役割を担わなければならない場所なのです。 ラボ、ベンチ、作業場、教室の聖なる場を離れて、彼らの化学・技術の努力がどれほど興味深く、クールで、現実に直結して必要性があるかを体感させるべく、大衆を引き込み、刺激を与えるコミュニティに出なければなりません。 さらに、専門知識のない一般人が理解し、共鳴し、享受できる語彙と表現をもって、これを行う必要があります。
@COSIのFrederic Bertleyは、カリブの移民の子息だった彼がどのように大手科学機関#FutureLeaders18のCEOに上り詰めたかを私たちに話してくれました。pic.twitter.com/V6My3dJI8y
— César A. Urbina-Blanco(@cesapo)2018年8月16日
科学の影響をメディアで最大化するには、どうしたらよいのでしょうか。 ポピュラーサイエンス誌の科学編集者Rachel Feltman氏が、研究の認知度を上げ、ジャーナリストにその目標やメリットを伝える方法でのコツをお話してくれました。 研究の発見を効果的で説得力のある方法で衆目を集めることができるよう、科学的な会話の向こう側に届くコミュニケーションスキルの会得が科学者に必要だと強調します。
科学とメディアについて@RachelFeltman聞くことができて大興奮です!
— Madison Fletcher(@madihfletch) 2018年8月16日
大衆との関わり合いでは、科学者はどういった役割を担うべきだと考えますか。 #FutureLeaders18 #SciComm pic.twitter.com/nDS86kFgFT
次世代の科学者のためのリーダーシップのスキル
競争の先頭に立ち続けるためには、科学で成果を出せるばかりではなく、ラボとラボの外で研究の取組みを主導できる能力を持つ研究者を昇進、雇用しながら、組織はセクター横断的に全従業員のリーダーシップスキルの重要性を理解する必要があります。
次世代の科学者のため、リーダーシップトレーニングが包括的キャリア開発プランの不可欠な一部です。 本年度のプログラムと2018年度CAS SciFinder未来のリーダー達の詳細をご確認ください。