人工知能と記述的分析時代の幕開けに、これらの輝かしい新技術が舞台の中央に躍り出て、伝統的な記述的分析によるアプローチはその輝きを若干失ったようです。 新興技術は、その新しい手法によって心躍るデータ探索を行える機会をもたらします。しかし、市況の現状の基礎的な理解を得るためには、記述的アナリティクスはまだ有用です。 高品質のデータと共に使用すれば、機会の特定から市場開拓まで、革新のパイプライン全体に亘って情報を提供できる重要な洞察を導くことができます。
以前の投稿では、化粧品市場で起こっている消費者主導の混乱と成長について議論しました。 業界が成長し進化するにつれて、生成されるデータ量はより膨大かつ複雑になり、トレンドに遅れず機会を見つけることが困難になります。 このように競争が激化した市場では、市況と代替戦略を深く理解するために、詳細な記述的アナリティクスは極めて重要です。
ダイナミックな化粧品市場における機会とリスクをより明確に解明するため、CASアナリティクスチームは過去50年間に亘る化粧品特許出願分野の詳細な解析を行い、この進化しつつある業界の最も重要なトレンドの表面下まで掘り下げました。 その結果からは実行可能な洞察がもたらされ、記述的分析がグローバル展開の指針、サプライチェーン戦略への情報提供、イノベーションの喚起に役立つことを実証しています。
グローバルな成長が化粧品の知的財産状況に変化を促す
化粧品市場は過去8年間に平均4.2%の成長を遂げ(Statista)、着実な成長は止まる気配がありません。 この成長の推進力は多種多様ですが、人口の高齢化、皮膚の保護と紫外線問題に関する理解の高まり、化粧品市場への男性の参入、そして新興成長市場における中産階級の消費者の成長などが挙げられます[Grand View Research (グランドビューリサーチ)、 Inkwood Research (インクウッド・リサーチ)、 Franchise Help(フランチャイズ・ヘルプ)]。
しかし、これに伴う知的財産(IP)の状況は、全体的な市場の成長よりもさらに大きな成長を遂げています。 化粧品特許の出願は、過去数十年間にほとんど指数関数的とも言える成長を見せています。中国が日本に代わって化粧品特許の首位を取り、中国の譲受人による大量な出願が、その一要因となっています。 中国以外の他の国々も成長に寄与しており、特許譲受人の国籍の数は過去20年間にほぼ倍増しました。 他の技術分野と比較して、日本とフランスは化粧品IPにおける相対的な強さが目立っており、アジアやヨーロッパの市場への参入を目指して革新のトレンドを監視し戦略的パートナーを探しているのなら、両国が有用な地域であることを示唆しています。
天然製品ブームにおける地域差は市場開拓戦略に影響を及します。
天然製品に対する消費者の好みは、化粧品市場における革新を牽引する主要なトレンドの一つです。 天然およびオーガニックの美容品市場の今後5年間の成長は8~10%と予測されていますが、これは化粧品市場全体に予測される成長率の2倍にあたります(Persistence Market Research)。 特許出願状況はこのトレンドを反映しています。 化粧品には多彩な天然物が使用されていますが、過去30年間の特許出願においてはアロエとローズマリーが明らかなリーダーであり、過去10年間ではアロエが一貫して首位を保っています。
特許出願において引用されている天然物の国レベルの詳細な分析は、重要な地域差を明らかにしました。 例えば、ある地域では好みが非常に一貫している一方、ヨーロッパ(下図を参照下さい)の様な他の地域では好みが多岐にわたっています。 標的とする市場や市場開拓アプローチを検討する際には、この様な差は重要です。 強力な流通網を有する大企業は均質で大きな地域では規模による優位性を発揮できますが、小規模な地域の企業にとっては多様性のある地域市場が特化した地域的サービスを提供する格好の機会となるかもしれません。 この様な地域で費用対効果の高い競争を行うためには、大組織は地域企業の買収や第三者との提携を検討する必要があるかもしれません。
新たな応用と処方が、人気の高い化粧品成分を再活性化する道を開く
化粧品では、他の多くの産業と同様に、拡張可能なカスタム化が次の未開拓分野です。 この動きは、消費者の特別なニーズと特徴に合わせた製品に対する消費者の期待と、これまで可能であったよりもはるかに大きなスケールかつ低コストでのカスタム化を可能にするインダストリー4.0技術との合流により引き起こされています。
この様な進化に対応するために、業界のリーダーは急速に革新を進め新製品を素早く上市する事に熟達しなければなりません。 また、創造的なIPと事業戦略も、これらの新規処方を保護し、競争優位性を維持するために必要とされるでしょう。 ですが、これは「言うは易く行うは難し」です。 一つの解決策は、アロエなどの長期にわたって人気を博している成分を新しい方法で使用する機会を見つけて、信頼できるメリットを持つ新鮮な製品を提供できるような新たな製法を開発することです。
アロエはその魅力的な特性と加工コストが比較的低い事から、化粧品に使用される最も人気のある天然物の一つとしての地位を数十年に亘って維持しています。これほど多くの既存製品がアロエを使っていると、化粧品企業にとってはこの魅力的な成分を含む新製品の処方を導けるようなIP空間の発見は、もはや困難になってきています。 実際に弊社の分析によれば、アロエに関する公開された特許出願には、既に数百もの他の物質が記載されていることが分かっています。 CASロールの索引はそれぞれの特許における物質の具体的な使用について記述したものですが、その分析から、これらの処方におけるアロエの主要な機能は肌を整えることであると分かっています。 他の主要なアロエ含有処方は、老化防止や日焼け防止剤への応用です。
新規製剤は通常はグローバルな特許性を有するため、この混みあったスペースで革新を起こせるような戦略としては、IP取得の余地がありそうなあまり一般的ではない応用法、またはあまり一般的ではない成分を用いた製剤におけるアロエの使用に焦点を絞ることです。 記述的アナリティクスにより、さまざまな製剤成分と使用目的を迅速に概観し、そういった機会がある分野を特定することが可能になります。 今後、どのようにして化粧品における革新のチャンスの探索に予測ネットワーク解析が使用できるかについて、ブログ記事とホワイトペーパーで解説する予定です。
実行可能な戦略的洞察のためのカスタマイズされたアナリティクス
ここに示されるように、パブリックデータリソースの分析で、特定の市場、地域または技術領域に関する有益な一般的見解が得られます。 しかし、特定の戦略を牽引するためのより具体的かつ実行可能な結論が必要とされるときは、カスタマイズされたアナリティクスのプロジェクトのほうがより深い洞察が得られます。 カスタムアナリティクスにより、CASのコンテンツコレクションのような高品質の外部データソースと、顧客情報、既存の化合物のIPポートフォリオや処方、そして地域別の売り上げデータなどの専有内部リソースとを組み合わせることで、より完全な状況の全体像を把握することができるようになります。 更に、カスタムアナリティクスにより、貴組織にとって最も影響力の強い領域での具体的な質問に対する答えを求めることもできるようになり、その結果も専有情報とすることができます。このようにして、貴組織に独自の戦略的展望がもたらされます。
より深い洞察を貴組織にもたらせるような、カスタマイズされた分析をご希望であれば、 CAS知識サービスがどのようにお役に立つか、是非こちらをご覧ください。