大規模言語モデルは科学研究に適しているのか

Philippe Ayala , Data Science Technical Manager

Senior chemistry professor writing on the board

AIツールや専門アプリケーションではなぜ大きいほどよいとは限らないのか

2022年のリリース以来、ChatGPTはAIをめぐる議論を大きく変えました。 奇跡とも脅威とも言われ、仕事に革命を起こすとか、都市を活性化するなどのポジティブな見込みから、人間の仕事を取り上げるというネガティブな影響まで、この大規模言語モデル(LLM)は、ほとんど何から何までできるように言われています。

ChatGPTとGPT-3/GPT-4は何が違うのか

ChatGPTと、GPTに数字が付いたLLM(GPT-3やGPT-4など)には重要な違いがあります。 これらはよく混同されたり、同じ意味で使われたりしていますが、ChatGPTは、より複雑なLLM(GPT-3またはGPT-4)上で動作する「使いやすい」インターフェースを持つチャットボットのアプリ部分のことです。

GPT-3とGPT-4はGenerative Pre-Trained Transformerモデルの異なったバージョンを指しています。 トランスフォーマーとは、ニューラルネットワークの一種で、言語モデルと呼ばれています。 これらのモデルは、学習することにより、文章中の単語のように緩く構造化されたデータのパターンと文脈を認識できるようになります。 トランスフォーマーは特にそれが得意なモデルです。 生成モデルは、文脈が与えられると、プロンプトから任意の長さの出力を生成することができます。 そしてGPTモデルは、この2種類のモデルを組み合わせたものになっています。

一方、ChatGPTは、GPT-3やGPT-4などのLLMの上に乗っかるアプリです。 以前の会話を継続させるためのメモリーモジュールがあり、有害または不適切な回答を最小限に抑えるフィルターや分類機能なども内蔵されています。

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LLMの構築には何が必要か

LLMはなかなかのものです。 GPT-3には1,750億のパラメーター、つまり学習しながらモデルが独自に変更できる値の数が、それだけあります。 2023年に発表されたGPTシリーズの最新版のGPT-4では、さらに多い1兆個のパラメータがあります。 GPT-4の使用経験がある人なら誰もが知っているように、これらのモデルは驚くほど幅広い知識を持ち、首尾一貫した情報を生み出す驚異的な能力があります。

ただし、この能力には文字通りコストが伴います。 ますます規模が大きくなるGPTモデルをトレーニングし、そしてChatGPTのようなアプリを展開することは、とてつもないエンジニアリングの偉業と言えます。 GPT-3の構築には460万ドル、そしてクラウドでの運用には少なくとも年間8.7万ドルかかっていると推定されています。 GPT-4の開発費は、おそらく1億ドルかそれ以上になっているはずです。

上記の額に加え、ハードウェアの膨大なコストと、運用し続けるためのリソース、またデータセンターの冷却も必要になってきます。 データセンターは何十億ガロンもの水を使用することもあり、また空調は電力を消費し、排ガスに寄与するため、導入を検討する組織は、この強力なツールのコストとメリットを評価せざるを得なくなります。 この初期費用と継続的なコストのため、LLMはほとんどの民間企業、学術機関、そして公共機関にとってすでに法外に高額なものとなっており、今後もモデルの規模が拡大し、またより強力になるに伴い、この傾向は続くことでしょう。

LLMの限界

特定の構造コンポーネントのお陰で、トランスフォーマーモデルは異なる入力間の関係を捕捉し、そして膨大な量のサンプルテキストのお陰で、最新LLMではテキストの大まかな意味を抽出し、テキストの各要素間の関係を非常にうまく追跡できるようになりました。 GPT-3のような生成モデルでは、さらに一歩進んで、質問と回答の両方で、こういった関係を追跡することを学んでいます。 その結果は、多くの場合で説得力があるものになっています。 ChatGPTに0と100の間の数字を求めたり、コレステロールがステロイドかどうかを質問したら、おそらく正しい答えが返ってくるでしょう。

しかし、科学研究のような専門的用途の場合、大規模言語モデルでは、大まかな意味以上の、微妙な差異がある具体的情報を理解するのに苦労する場合があります。 それはどうしてでしょうか。 まず、LLMは「Garbage In, Garbage Out(ゴミを入れたら、ゴミが出てくる」の問題に影響を受けずには済まないということが挙げられます。 次に、高品質のトレーニングデータがあっても、関連するトレーニング情報が不足している場合があります。

広範囲で、頻繁に記述されるトピックはLLMで的確に捕捉される一方、範囲が狭く専門的なトピックは、ほとんどの場合不足しており、そこではそれほど的確に処理されません。 例えば、大規模言語モデルが適切な抽象レベルに達した結果、あるものがステロイド分子であるかを判断できるようになったとします。 同族の2種のステロイド分子を区別することさえできます。しかしどちらかが非常に有毒で、どちらかがそうでないかを一貫して認識することはできません。 大規模言語モデルでそれが区別できるかどうかは、トレーニングに使われたデータと、正しい情報が認識され「記憶」されたかどうかに依存します。 正解が、間違った情報や矛盾する情報の山に隠されていたら、モデルはそれを導き出す方法はないのです。

データの量を増やし、よりクリーンなデータを用い、そしてより大きいモデル使えば、問題が解決すると反論する人もいるかもしれません。 それは正しいかもしれません。しかし、生成LLMに0から100の間の乱数を求めた場合どうなるでしょうか。 回答が実際に乱数であると確信できるでしょうか。 この質問に答えるには、語彙意味論や記憶された事実を超え、LLMを超え、AIエージェントまで行く必要があります。 そうすればエージェントは、検証された手続きを使って実行可能なコードを構築し、それを別のプロセスに渡して実行させ、結果を処理してユーザーに回答を返すでしょう。

科学データに固有の課題

CASの科学者たちが理解しているとおり、科学データとはテキストだけよりも、はるかに複雑です。そして、ほとんどの問題は、1つか2つの質問だけでは表現しきれません。

科学の研究にAI主導のツールを使うときは、わたしたちは、どんな問題を解こうとしているのか、と自問する必要があります。 多くの問題は、言語または緩く構造化されたシーケンスを含むため、言語モデルは完璧に適合します。 しかし表データや分類データ、ナレッジグラフ、時系列データについてはどうでしょうか。 これらのデータは科学研究に必要です。しかしLLMでは必ずしもそれらを活用することはできません。 つまり、LLMだけでは分子研究のような用途に必要なレベルの具体性を提供できないということなのです。 代わりに、オーケストラがまとまった音を出すためには多数の楽器を必要とするように、科学ではまとまった結果を出すためにはAIツールボックスに複数のツールが必要なのです。

幅広さと深さを伴ったシステムアプローチ

LLM単独では科学研究に適していないとしたら、では何が良いのでしょうか。 それは、複数の種類のモデルを用いて特化した出力を生成させる、システムアプローチです。 言語モデルやニューラルネットワークを、従来の機械学習ツール、ナレッジグラフ、化学情報学、バイオインフォマティクス、さらにはTF-IDFなどの統計的手法と組み合わせて多層化することで、研究者はAI主導のプログラムにおいて、深くそしてニュアンスのある情報を含めることが可能になります。

こういったツールは、新薬分子の開発や新規化合物の創出などのタスクに必要とされる、具体的な結果を提供できます。 ナレッジグラフは、分子、反応、発表済みの論文、管理された概念など、既知のエンティティを確実に関連付けるグラウンドトゥルースとして機能するため、特に有意義です。理想的な使用事例では、「これは特定の種類の物質だ」と回答できるディープニューラルネットワークと、その正確性を検証するナレッジグラフを活用するものになります。 このようにして、科学研究に求められる信頼性の高い事実を得るのです。

この種のシステムアプローチは、本質的にはデータの信頼性を向上させるための事実確認や検証機能であり、専門的な用途で効果を発揮しています。 例えば、NVIDIAが最近リリースしたPrismerは、画像に関する質問に答えたり、画像のキャプションを提供したりするために設計された、ビジョン言語モデルです。 このモデルは、複数の小さなサブモデルをトレーニングする Mixture of Experts アプローチを採用しています。 このモデルがもたらす知識の深さのお陰で、大規模なトレーニングなしで質の高い結果を得ることができました。10倍から20倍のデータでトレーニングされたモデルに匹敵する性能を発揮しています。

Googleも同様のアプローチに取り組んでおり、そこでは汎用の「教師」言語モデルから知識を抽出して、より小さな「生徒」モデルに知識を与えています。 生徒モデルは、より深い知識を有するため、大規模モデルよりも優れた情報を提示します。7.7億のパラメータでトレーニングされた生徒モデルは、ある特殊な推論タスクにおいて、5,400億のパラメータを持つ教師モデルを上回りました。 より小規模のモデルはトレーニングに時間がかかる一方、コストが安く高速に実行できるため、その継続的な効率の向上に価値があります。

科学研究の改善

システムアプローチのもうひとつの成功例は、CASで私と同僚が開発したPaSE(特許類似性エンジン)です。これは、CAS STNextCAS SciFinderのユニークな機能を支えています。 このモデルは、ブラジルの特許庁である、ブラジル国立工業所有権機関(INPI)との共同研究の一環として構築されました。 調査員が手つかずの特許バックログに対処できるよう、膨大な情報を数分で処理できるように設計されたものです。

このソリューションには、GPTファミリーと同じ重要な機械学習技術を使用する言語モデルが含まれており、それにナレッジグラフや化学情報学、そして従来の情報検索統計手法など、追加の学習タイプのレイヤーが重ねられています。 PaSEは、CAS コンテンツコレクションTMに含まれる特許や学術論文のフルテキストなど、世界中の科学情報を使ってモデルをトレーニングすることにより、手作業で検索するよりも50%速く「先行技術」を見つけるために必要な深さと幅広さを実現しました。

特許庁で特に難しいのは、何かが存在しないことを証明することです。 「証拠が無いということは無いことの証拠にはならない」という言葉を思い浮かべればわかります。CASのデータサイエンティストは、特許サーチャーの専門家、ブラジルINPIチーム、および独自のAIツールの組み合わせと連携してモデルをトレーニングおよび最適化した結果、手作業での検索を40%減らして先行技術を特定することができたのです。 この性能、そして特許バックログが減ったことにより、2021年にPatent Information Users GroupStu Kaback Business Impact Awardを受賞しました。

科学における大規模言語モデルの前途

上記の経験からもわかるように、LLMは今後も科学研究において重要な役割を持ち続けるでしょう。しかし、一般に信じられているのとは逆に、このツールはあらゆる問題や疑問に対する万能薬ではありません。

私は、家の中の散らかった部屋、例えばクローゼットや屋根裏部屋の整理整頓という観点から、これらのモデルを考えると分かりやすいと思っています。 そういった部屋にあるものの整理方法は、人によってさまざまです。 すべてを色で分類して整理する人もいれば、貴重品をひとまとめにする人、または機能別に整理する人などもいるでしょう。 どの方法も間違ってはいません。しかしそれは自分が望む、あるいは必要とする整理の方法ではないかもしれません。 これは基本的にLLMの問題を表しています。LLMがある特定の方法で情報を整理しても、それは科学者や研究者が求める方法ではないかもしれないわけです。

タンパク質配列、特許情報、化学構造など、ユーザーが特定の結果を必要とする専門的な用途の場合、その特定の方法で情報を整理して処理するように、AI搭載モデルをトレーニングする必要があります。 最適なトレーニングと予測を行うには、ユーザーが望む方法でデータ、結果、変数を整理する必要があります。

そのデータの影響、その表現、科学における予測を向上させているモデルについてより詳しく知るには、CAS Custom Services のケーススタディをお読みください。 AIと化学において新たに登場している状勢について詳しく知りたい方は、 AIが化学にもたらすチャンスに関する最新のホワイトペーパーや、AIがいかに世界中の特許事務所の生産性を向上させるかを説明したリソースをご覧ください。

ウイルスとの戦いから腫瘍との戦いへ - mRNAワクチンをがん治療に活用する

CAS Science Team

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グローバル規模で増大するがんの負担

がんとそれに関連する死亡率の負担は、人口の高齢化と、がんの主要危険因子の有病率と分布の変化によって、世界中で急速に増大しています。 2040年には2,840万人ががんと診断されると予測されています。これは、2020年から47%の上昇となります。

最も診断数が多いがんは、現在は肺がんを抜いて女性の乳がんになっています。推定では2020年には230万人(11.7%)が新たに乳がんに罹患するとされており、次いで肺がん(11.4%)、大腸がん(10.0%)、前立腺がん(7.3%)、胃がん(5.6%)となっています。 がん治療における重要な進歩のひとつとして、チェックポイント阻害薬などの免疫療法があります。 この画期的な前進にもかかわらず、免疫療法はすべてのがんに効く万能薬となっていません。 これは、すべての腫瘍タイプが免疫療法の薬に反応するわけではないためです。それに、対抗機構が腫瘍の免疫回避や増殖につながる可能性すらあります。

現在、米国食品医薬品局によって承認されているmRNAがんワクチンは現在ありません。しかし、チェックポイント阻害薬ペムブロリズマブ(メルク社)との組み合わせにおける治験用ワクチンmRNA-4157-P201(モデルナ社)は、完全切除後の高リスク黒色腫における補助療法として画期的治療薬に指定されました。 mRNA ワクチンがCOVID-19で成功したことから、研究者はmRNAワクチン技術ががん細胞の治療に応用できると確信しています。 では、がん治療にmRNA療法が取り入れられる日は近いのでしょうか。

一巡したmRNAワクチンとがんの関係

多くの人にとって、COVID-19 mRNAワクチンは一夜にして開発されたもののように見えるかもしれません。 しかし、これらワクチンの迅速な設計、製造、そしてテストは、インフルエンザやサイトメガロウイルス、そしてジカ熱用のワクチンといった基盤となる長年の研究がなければ不可能でした。

1995年、画期的な研究によって、カルチノ胚性抗原をコードするnaked RNAを筋肉内に注射すると、マウスに抗原特異的抗体反応が誘発されることが示されました。 その翌年には別の研究で、mRNAを導入した樹状細胞を腫瘍を持つマウスに注射すると、T細胞免疫反応が誘導され、腫瘍の成長が抑制されることが示されたのです。 この研究が、mRNAをベースとした技術の実現可能性、有効性、安全性を探求する数多くの研究へ道筋をつけました。 しかしながら、最近までは、その不安定性、自然免疫原性、非効率的な生体内送達などが原因で、mRNAワクチンや治療への応用は限られていました。 研究者たちが直面した大きな課題は、mRNAをどのようにして必要な場所に届けるかということでした。mRNA配列を何らかの形で保護せずに体内に注入すれば、異物として認識され破壊されてしまうだけです。

そんな中、新型コロナウイルスSARS-CoV-2に対応するために行われたmRNAワクチンの急速な開発のお陰で、mRNAワクチンの使用は研究室から病室へと加速されます。 例えば、ファイザー/ビオンテック社とモデルナ社のワクチンは、mRNAを標的細胞に送達する上で脂質ナノ粒子(LNP)の利用が有効であることを実証しました。 2019年末、SARS-CoV-2の流行を受け、両社ともmRNA治療に関する論文を発表、すると関連特許出願が世界中で急速に増加しました。 2020年以降は、論文数は急速な増加傾向を示し、2021年には3,361件、2022年には5,000件近くにまで増加しています。 特許出願件数も2020年以降ずっと増加傾向が続き、2021年に382件に達しているほか、2022年には510件に増加すると推定されています(図1)

mRNA治療 論文と特許件数 図1
図1. mRNA治療法とワクチンに関する論文(左)と特許ファミリー(右)のグローバルな公開傾向。

COVID-19 mRNAワクチンが成功したことで、mRNAプラットフォームが他の感染症だけでなく、がんにも拡大できる可能性が明らかになりました。 さまざまなウイルス研究から得られた洞察が、今やがんワクチンの研究に役立つ可能性が出てきています。つまり一周して、出発点に戻ってたきたと言うわけです。

免疫系をリクルートする - mRNAがんワクチンの仕組み

がんワクチンにおけるmRNAの応用範囲は広く、そこで研究者はがん免疫療法に向けて以下を含むいくつかの戦略を模索しています。

  • 抗原提示。 mRNAワクチンは、がん抗原を抗原提示細胞(APC)に送達し、主要組織適合性複合体クラスIおよびクラスIIを提示します。
  • アジュバント機能。 mRNAは、APCにより発現するパターン認識受容体に結合することで免疫活性化を刺激します。
  • 抗原受容体。 mRNAは、キメラ抗原受容体(CAR)やT細胞受容体などの抗原受容体をリンパ球に導入します。
  • タンパク質の生産。 mRNAは、トール様受容体、ケモカイン受容体、共刺激性リガンド、サイトカイン、ケモカイン、そしてさまざまなモノクローナル抗体などの免疫調節タンパク質を、各種細胞サブセットに発現させることができます。

mRNAがん治療は間もなく実現するのか

ジェネンテック社、CureVac社、そしてモデルナ社などの企業は、標的腫瘍に対する免疫反応を誘発できるネオエピトープをコード化したmRNAワクチンを開発しています。 mRNAワクチンは、単剤療法としてまたは併用療法の一環として用いる形で、膵臓がん、大腸がん、黒色腫などさまざまなタイプのがん患者を対象に数十件の臨床試験が実施されています。 いくつかの候補薬で第2相臨床試験が始まっており、黒色腫、非小細胞肺癌、そして前立腺癌で良好な有効性が示されています(表1)。

表1. がんの臨床試験中のmRNAワクチン(第2相以降)

ワクチン
CAS 登録
番号®
対象
疾患
抗原 企業
Autogene cevumeran  2365453-34-3 黒色腫、
大腸
がん
患者特異的な
新抗原
ビオンテック
mRNA 4157 2741858-84-2 黒色腫 最大34の新抗原 モデルナ
BNT 113 2882951-85-9 PV16+頭頸部扁平上皮がん HPV16由来の腫瘍抗原(がんタンパクE6およびE7) ビオンテック
CV 9202 1665299-76-2 非小細胞肺がん NY-ESO-1、MAGE C1、MAGE C2、TPBG(5T4)、サバイビン、MUC1 CureVac
CV 9103 2882951-83-7 前立腺がん 前立腺がん関連抗原4種類の混合 CureVac
SW 1115C3 2882951-82-6  非小細胞肺がん、食道がん 患者特異的な新抗原 Stemirna Therapeutics
BNT 111  2755828-88-5  黒色腫 黒色腫関連抗原4種類の混合 ビオンテック

mRNAがんワクチンが研究者間で関心を集めている一方で、歴史的にはほとんどのがん研究はmRNA治療法に焦点を当ててきており、現在でも以下を含む、多岐にわたる候補薬が臨床開発段階にあります(表2)

  • TriMix-MEL、(eTheRNA Immunotherapies社)。がんに対する主要免疫細胞を活性化するmRNAを3種混合したもの。
  • mRNA治療薬、(ビオンテック社)。複数のがんに発現するタンパク質のクローディン18を標的とするモノクローナル抗体をコードするもの。
  • LNPでカプセル化されたmRNA、(MedImmune LLC社)。腫瘍内注射で投与することで局所的にインターロイキン12(IL-12)産生を促し、抗腫瘍免疫を誘導するように設計されている。

表2. がんの臨床試験中のmRNA治療薬

mRNA薬剤名 CAS 登録番号 対象疾患  企業
TriMix-MEL、ECL-006、E011-MEL 2877674-59-2 黒色腫 eTheRNA Immunotherapies
BioNTech-1、BNT 141、BNT-141、BNT141 2877707-22-5 固形腫瘍 ビオンテック
BNT-142、BNT142  2877707-34-9 固形腫瘍 ビオンテック
BNT-151、BNT151 2877709-82-3  固形腫瘍 ビオンテック
BNT 152、BNT152 2877709-92-5 固形腫瘍 ビオンテック
BNT 153、BNT153 2877709-93-6 固形腫瘍 ビオンテック
MEDI1191、MEDI-1191 2877712-03-1 固形腫瘍 モデルナ
mRNA-2752 2878461-50-6 固形腫瘍 モデルナ
SAR-441000 2879301-17-2 固形腫瘍 Sanofi、
ビオンテック
SQZ-eAPC-HPV 2879306-51-9 HPVおよび固形腫瘍 SQZ Biotechnologies

mRNAがんワクチンの実現に向けて

近年、mRNAがん技術は大きな進歩を遂げました。しかし根本的な課題がいくつか残っています。 まずmRNAがんワクチンは、標的組織/臓器に適切な親和性を持つ専用のパッケージングと送達システムを必要とするということがあります。 研究者は現在、これに対してはオリゴヌクレオチドに臓器の標的部位を結合させるなど、さまざまな手段を検討しています。 mRNA送達で最も研究されている媒体はLNPです。しかし細胞毒性の懸念と循環時間が比較的短いことから臨床応用が妨げられてきました。 そのため、mRNAカーゴのバイオアベイラビリティ、負荷、放出を改善するために、さまざまな代替スマート送達システム(エクソソームなど)が検討されています。

ただし、mRNAカーゴ送達の成功だけでは不十分です。 最大限の効果を得るため、生体内でタンパク質発現を高める手法も研究されてきました。 mRNAのすべての部分(キャップ、5′領域、3′領域、オープンリーディングフレーム、ポリアデニル化テール)が、タンパク質発現増強のために最適化できます。 そしてこの領域では、化学修飾ヌクレオシドが有望になっています。

タンパク質の発現量に加えて、mRNAワクチンの重大な課題として、タンパク質の産生期間が比較的短く、反復投与が必要なことが挙げられます。 RNAの寿命を延ばし、タンパク質の全収率を上げる戦略として、自己増幅型や環状のmRNAが研究されています。

まだ多くの課題が残されているものの、mRNAワクチンは、単独またはチェックポイント阻害剤など既存の治療オプションと併用することで、何種類かのがんの治療のための汎用性の高い臨床オプションとなっています。 最初のmRNA治療薬の発表が期待される一方、がんというグローバル規模の負担に取り組む中で、多数の革新的な戦略から生み出されてくる成果自体も、注目に値します。

mRNAワクチンと治療薬についての詳細は、ACS Pharmacology and Translational Science誌に掲載された弊社の査読付き論文をお読みください。

 

 

ファーマは肥満を克服できるのか

Terra Williams , CAS Content Scientist

male hands holding insulin pen

 

     


 

 

 

 

ウゴービという、週1回服用する減量薬を宣伝する鮮やかな緑色の広告が、ニューヨークの地下鉄のいたるところで見られます。 かと思うと、各誌のヘッドラインを飾っているのは、著名人がオゼンピックという薬のパーティーを主催しているという噂です。 そんな中、マンジャロなる新参者が登場。こちらはSNSで注目を集めています。このようにして、最近FDA(米国食品医薬品局)に認可された新薬が、グローバルな人気の波に乗っています。

もともとは2型糖尿病治療薬として開発されたGLP-1受容体作動薬のオゼンピックウゴービ(いずれもノボノルディスク社製)、および併用薬であるマンジャロ(イーライリリー社製)は、減量薬としての潜在的な効果を求める顧客からの需要増加により、品不足に陥っています。 肥満は世界人口の約3分の1に影響を及ぼす世界的な問題となっており、2035年には50%を超えると予測されています。 その結果、冠状動脈性心臓病、高血圧、2型糖尿病など、さまざまな病気のリスクが高まっています。

この危機的状況の拡大を受け、GLP-1受容体作動薬と、GIP類似化合物および関連治療薬との併用が、肥満とその関連疾患に対する有望な治療選択肢として浮上してきました。 これらの科学的アプローチの相違点、そして今後の減量の方向性などを理解しておくことは、この分野でのイノベーションが新たな一歩を踏み出す上で非常に重要になります。

身体が血糖値を調節する仕組み

身体には血糖値のバランスを保つ仕組みがあります。 体内の血糖値が低くなると、膵臓のα細胞はグルカゴンというホルモンを生産し、肝臓にもっと糖分を血液中に放出するよう指令を出します。 反対に血糖値が高くなると、膵臓のβ細胞はインスリンを分泌し、脂肪や筋肉、肝臓やその他の体組織で糖を利用したり蓄えたりするのを助けます。

胃抑制性ポリペプチド(GIP)とグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、腸から分泌される2種類のホルモンで、インスリン産生の調節に大きな役割を果たすため、肥満や糖尿病において重要です。 インスリンが必要なのは、血糖値のバランスを保つためです。 体内の血糖値が低くなると、膵臓のα細胞はグルカゴンというホルモンを作り出し、もっと糖を作るよう肝臓に信号を送ります。 反対に血糖値が高くなると、膵臓のβ細胞はインスリンを分泌し、体のエネルギー消費や貯蔵を助けます。

GIPはインスリンとグルカゴンの両方の産生を刺激し、インスリン産生細胞を細胞死から守ると同時に、その増殖を促進します。 GLP-1は、膵臓からのインスリン分泌を刺激する一方で、グルカゴンの分泌を抑制します。

薬剤によってどのように肥満を抑制するのか

現在、糖尿病と肥満を両方抑制する薬剤には、いくつか種類があります。 セマグルチド(オゼンピックやウゴービの商品名で販売)などのGLP-1受容体作動薬は、GLP-1の作用を模倣することによってインスリンの産生を活性化します。 チルゼパチド(商品名マンジャロ)はGLP-1受容体作動薬とGIP類似化合物を組み合わせたものです。 GLP-1受容体作動薬は細胞内のグルカゴン様ペプチド-1受容体に結合し、GIP類似化合物はGIPの機能を模倣し、どちらもインスリンの産生を刺激します。 最近では、GIP、GLP-1、グルカゴン作動薬であるレタトルチドという新薬が登場し、初期の臨床試験で有望な結果が得られています。

以下は、減量用として検討されている薬剤とGLP-1受容体作動薬の概要です。

    1.  セマグルチド(ウゴービ、オゼンピック)などのGLP-1受容体作動薬

    2.  併用アプローチ

           a.チルゼパチド(モンジャロ)などのGLP-1およびGIP受容体作動薬

           b.レタトルチドなどのGLP-1、GIP、グルカゴン受容体作動薬

これらの減量薬を支える科学

GLP-1およびGIP受容体を活性化すると、体内のグルコースと脂質の代謝が促進されます。 これにより、食欲の減退および消化速度の低下が生じる一方で、脂肪症を低下させて肥満に関連する疾患のリスクを低下させる能力が強化されます。 主な効果は以下の通りです。

  • インスリン分泌。GLP-1とGIPは、血糖値が高い時に膵β細胞からのインスリン分泌を刺激することができます。 これは血糖値を下げるのに役立ちます。
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  • 胃排出。GLP-1とGIPは、胃から腸への食物の移動を遅らせることができます。 これで、満腹感を長く感じることができ、食欲とカロリー摂取を抑制できます。   
  • 食欲調節。GLP-1とGIPは、空腹と満腹のシグナルを制御する脳領域に影響を与えます。 これにより、空腹感を感じにくくし、満足感を高めることで、食欲を減退させ、食物摂取量を減少させることができます。  

併用アプローチの重要性

併用療法で考慮すべき重要な要因は、相乗効果です。 相乗効果とは、複数の薬剤を組み合わせることによって、それぞれの薬剤の個々の効果の合計よりも大きな効果が得られることです。 薬物療法におけるGLP-1受容体作動薬およびGIP類似化合物を併用することがなぜ重要かというと、そうすることで2つの主要なホルモンの一方だけが影響を受けるのではなく、両方の分子経路が影響を受けるためです。 セマグルチドなどの単剤療法では、ヒトやマウスでの試験で、薬効の一部に耐性が生じることが判明しています。 併用療法だと、複数の経路を標的とするため、身体が薬剤の効果に対して耐性を獲得するのを防げる利点があります。 併用療法で考慮すべきもうひとつの要因は、投与量です。 併用療法は、個々の薬剤の投与量が少なくて済む場合があるため、特定の副作用を回避できます。

臨床試験の結果と実際の結果

いくつかの臨床試験において、GLP-1受容体作動薬およびGIP/GLP-1受容体作動薬配合剤が、プラセボや他の治療薬と比較して糖尿病および/または肥満症の人に大幅な体重減少をもたらすことが示されています。  

New England Journal of Medicine誌に掲載された注目すべき研究では、セマグルチドチルゼパチドの有効性が強調されています。 1961人の治験参加者を対象とした二重盲検試験では、食事療法および運動療法にセマグルチド2.4mgを併用した結果、68週間で半数の参加者で体重が15%減少し、3分の1の参加者で20%減少しました。 一方で、生活習慣の改善のみを行ったプラセボ群の体重減少は2.4%でした。 2539人を対象とした別の研究では、チルゼパチドを5mg、10mg、15mgの用量で投与し、生活習慣への介入と併用したところ、各投与量の参加者のそれぞれ15%、32%、36%で、体重が25%以上減少しました。 生活習慣への介入のみのグループで体重が減少したのはわずか1.5%でした。

2型糖尿病患者を対象にチルゼパチドとセマグルチドを比較した研究では、チルゼパチドを投与した患者の82~86%が糖化ヘモグロビン値を7%未満まで低下させたのに対し、セマグルチドを投与した患者では79%だったことから、チルゼパチドが優れていることが示されています。

加えて、GLP-1、GIP、グルカゴンなどの標的を組み合わせた薬剤では、さらに注目すべき影響が観察されるようです。 イーライリリー社の第2相臨床試験から得られた最近の結果では、被験者の体重が平均で約24%減少しています。 規模の大きい第3相臨床試験でこれらの結果が実証されれば、拡張してきているイーライリリー社の減量薬製品のポートフォリオが大幅に強化されることにつながるかもしれません。

GLP-1受容体作動薬やGIPベースの治療法の人気と影響

メディアによりセンセーショナルに報道されたオゼンピックは、米国で処方が急増しました。 過去1年間で、オゼンピックの処方は111%増加し、2017年の承認以来、2型糖尿病市場においてトップの薬剤となっています(図1)。 オゼンピックは主に2型糖尿病で処方されていますが、2023年まではウゴービが不足していたため、慢性的な体重管理にも使用されています。

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図1:医薬品別の処方数

2022年5月に米国で「マンジャロ」の商品名で承認されたチルゼパチドは、イーライリリー社の2023年第1四半期の売上高、5億3760万ドルに貢献しました。 同薬は肥満症管理治療薬として米国FDAのファストトラック指定を受けているため、今後はセマグルチドの競合薬となることが予想されます。

文献の発表トレンドと特許分析

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図2. CAS コンテンツコレクション™ におけるセマグルチド関連の学術論文および特許文献の年次推移

CAS コンテンツコレクションでセマグルチド関連の論文を検索したところ、論文数は2019年から2022年の間に2倍以上に増加していることがわかりました。 マグルチド関連の特許も2011年に2件だったのが、2022年には109件に増加しています。 セマグルチドの人気が高まったことで、特に減量管理における研究において、さらなる出版物の増加が予想されます。

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図3 CAS コンテンツコレクションにおけるチルゼパチド関連の学術論文および特許文献の年次推移

チルゼパチドは、より新しい薬剤であることから、CASコンテンツコレクションによると、過去10年間の論文数は多くありません。 ただし、2021年に34件だった論文数は、2022年には72件に増加しています。 チルゼパチド関連の特許もこの間に増加しています。 より多くのチルゼパチドの臨床試験が完了し、減量管理薬としてFDAの承認を得るに伴い、論文も急増することが予想されます。

パイプライン分析

糖尿病と減量のための新薬開発は、現在活発に研究されている分野であり、いくつかの有望な候補薬が臨床試験のさまざまな段階にある中、ノボノルディスク社では、経口のセマグルチド薬が開発パイプラインにあります。 経口セマグルチドはまだフェーズ1段階で、糖尿病管理用の25mgと50mgのセマグルチドはフェーズ3段階にあります。 さらに、経口GLP-1/GIP併用糖尿病治療薬のフェーズ2試験が進行中です。 チルゼパチドは現在、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)治療薬としてフェーズ2試験が、そして駆出率維持心不全(HFpEF)、閉塞性睡眠時無呼吸症候群、肥満症における罹患率と死亡率、心血管転帰を対象としたフェーズ3試験が進行中です。 チルゼパチドは慢性肥満治療薬として早期承認され、薬事承認が間近に迫っています。 イーライリリー社もまた、GIP/GLPコゴニストペプチドを糖尿病治療薬として第1相試験中です。

今後の展望

肥満と2型糖尿病の有病率が世界的に上昇を続ける中、GLP-1受容体作動薬とGIPベースの治療薬は、論文発表やパイプライン開発が増加しており、有望視されています。 その成功と影響は、処方数の増加や臨床試験での良好な結果報告からも見て取れます。 減量管理における次の最前線は、モンジャロやレタトルチドの初期臨床試験といった、現在の薬剤を含む併用療法になるでしょう。 身体の自然なホルモン反応を利用することで、これらの薬剤は減量と代謝管理への新しいアプローチになっているだけでなく、他の疾患治療にもつながる可能性があります。 新たな治療薬や主要な進歩の詳細は、RNA治療薬エクソソーム脂質ナノ粒子など詳しいInsight Reportをご覧ください。  

 

 

バイオマテリアルにおける最新トレンドトップ10

CAS Science Team

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中国杭州の西湖大学と協力して編纂された本CAS Insights Reportでは、生体システムと相互作用するバイオマテリアルの未来を最定義する、新しいハイドロゲルや抗菌薬、脂質ナノ粒子、エクソソームなどの状勢に焦点を当てます。 このレポートは、バイオマテリアルに関わる多数の産業や学問領域において、どういった新しい機会や最新トレンドがあるのか、そして今後の主な課題は何なのかなどを明らかにします。 詳細は、以下からレポートをお読みください。

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エイジングの再考 - アンチエイジング治療戦略の可能性を探る

Rumiana Tenchov , Information Scientist, CAS

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歴史を通じて、人類は老化のプロセスに興味を抱き、それを理解し、それに立ち向かおうとしてきました。 例えば古代中国の医学には、健康と長寿を促進するために考案された漢方薬や鍼治療法が含まれていました。 そして1930年代に、主要なマイルストーンがありました。カロリー制限によってマウスやラットの寿命が延びることがわかったのです。 20世紀は、さらに遺伝学や細胞老化などの要因の役割を探る画期的な研究が行われます。

CASでは、加齢の生理学とアンチエイジング戦略に関連した50万件以上の科学文献(主に学術論文と特許)が特定されています。 こういった文献は時間の経過とともに着実に増加しており、特に最近10年間で研究への取り組みが活発化しています(図1)

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図1 - CAS コンテンツコレクション™ に登録されている老化の機序とアンチエイジング戦略に関連する文献(特許と特許以外の両方)の数の年次推移。

アンチエイジングの研究のトレンドを見ると、これはますます活発になる一方です。 世界保健機関(WHO)は、2050年までに世界の60歳以上の人口が20億人を超えると推定しています。 この人口統計の高齢化により、加齢に伴う病気に対抗し、そして健康的な老化を促すためのアンチエイジング研究に対する関心と投資が増加しています。 国連(UN)は、2021年から2030年を「健康長寿の10年」と定め、高齢者の健康寿命を延ばし、生活の質を向上させる介入策を見出すため、世界的な協力を推進することを宣言しました。

老化は多くの慢性疾患の危険因子のひとつです。一方、全般的な健康と幸福に焦点を当てた、「サクセスフル・エイジング」を促進させることに対する関心も高まっています。 本記事では、老化のプロセスを掘り下げ、サクセスフル・エイジングと長寿を促進することを目的としたさまざまな介入方法を探索します。 これらアンチエイジング治療戦略のうち、サクセスフル・エイジングの促進で最も有望なのはどれなのでしょうか。

老化は肌に留まらない

「アンチエイジング」という言葉は、往々にして、しわやたるみなど目に見える肌の老化現象を連想させます。 皮膚の老化は、その社会的・心理的影響の大きさから、広く研究されています。 身体における最大の臓器である皮膚は、身体を環境要因から保護する重要な役割を果たしています。 皮膚のこの機能は、老化に伴って低下し、健康全般に影響を及ぼします。 皮膚の老化は自然なプロセスではあるものの、その老化を遅らせ、皮膚の健康を維持する対策を講じることはできます。 ロレアル社やアモーレパシフィック社といった化粧品業界やスキンケア業界は、この分野に大きな関心を寄せており、数多くの特許も取得しています。 こういった企業の製品は、ヒアルロン酸やビタミンEなど皮膚の表層に作用する成分を使用しています。

老化のプロセスは表面で見えるものよりも、はるかに複雑です。 老化とは、広義の定義として、自身を守り、維持し、修復して効率的に働き続けるという、生体が本来持っている能力が徐々に機能的に低下していくことを指します。 は特に老化の影響を受けやすく、その大きさ、血管系、認知能力に変化が生じます。 そのため、アルツハイマー病など、加齢に伴う特定の神経疾患を発症するリスクが高くなります。

老化はまた、生理学的なフィットネスの漸減によって特徴付けられます。これは身体全体に影響し、機能の低下や脆弱性の増大につながっていきます。 老化だけでは、がんや糖尿病、または心血管障害などの重篤な疾患の直接的な原因にはならないものの、これら疾患やその他の病状の大きな危険因子にはなります。 この関連性が認知された結果、急成長しているこの老化研究の分野は、今や最前線に躍り出てきています。

老化の特徴

老化とは、つまり時間の経過によるダメージの蓄積です。それが、老化の特徴として知られる特定の生理学的変化を引き起こします。 これは、2013年に分子および細胞における9つの特徴、つまり 老化の特徴 として定義され、それ以降の研究の枠組みとして定着しました。 この9つとは、ゲノム不安定性、テロメア短縮、エピジェネティクスの変化、タンパク質恒常性の喪失、栄養感知の制御不全、ミトコンドリアの機能不全、細胞の老化、幹細胞の枯渇、そして細胞間コミュニケーションの変化です(図2)。

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図2 - 老化の特徴とされているスキームとその分類。

さらに問題を複雑にしているのは、 それぞれの老化の特徴は相互接続しており、互いに影響し合っているということです(図3)。 実際、これらがあまりに相互に絡み合っているため、研究者によっては老化というものを4つの層のプロセスとして考えるべきであり、そしてその層はそれぞれが異なった生物学的尺度で進行していると主張する者がいるほどです。 いずれにしても、老化について考えるにあたり、こういった異なる特徴同士の関係を理解することは、老化関連の疾患を予防・治療するための効果的な介入の開発をするうえで役に立つことは明らかです。  

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図3 - 老化の特徴間の相互関係。

最も期待できるアンチエイジング治療戦略とは

これまで 老化の特徴を標的としたさまざまなアンチエイジング治療戦略が検討されてきました。そしてその多くは、複数特徴を標的としています(図4)。 ここで、そのうち5つの治療介入を概観します。そして各アプローチの現在のエビデンスから、どれが特に可能性が高いかを判断します。

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図4 - アンチエイジング戦略と老化の特徴との関係 アンチエイジング戦略としての身体運動

身体運動は、多大なアンチエイジング効果を細胞レベルで示し、また老化の特徴 それぞれすべてに関係しています。 「老化の兆候に対する介入としての身体運動」に関しての研究は十分に確立されており、また臨床試験でも有望な結果が得られています。 現在進行中の注目すべき臨床試験では、アルツハイマー病、不安定歩行、認知機能、そしてPTSDに対する身体運動の効果が探索されています(表1)

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表1 - 身体運動によるアンチエイジング臨床試験のハイライト。

 

アンチエイジング戦略としての食事治療

近年、カロリー制限と断続的絶食という関連した2つの食事治療法が、長寿を司る基本的な代謝と細胞シグナル伝達経路に影響を与えることで、神経系の健康寿命を効果的に延ばすことが報告されています。 この手法は動物モデルでの成功が証明されているものの、カロリー制限は高水準の決意と自制心を必要とするため、人間に適用するのは難しい戦略です。 代替策として、「カロリー制限模倣物質」を用いることにより、その効果を模倣するという方法があります。 運動と同様、カロリー制限もよく研究されているアンチエイジング治療戦略であり、現在いくつかの臨床試験が進行中になっています(表2)。  

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表2 - カロリー制限によるアンチエイジング治療戦略のハイライト。

アンチエイジング戦略としての代謝操作

細胞代謝に重要な役割を果たしていると同定されているものとして、哺乳類ラパマイシン標的(mTOR)シグナル伝達経路があります。これは、細胞の成長と増殖を活性化する重要な細胞プロセスと、栄養感知とを関連付けているものです。そこでラパマイシンなどの薬剤によるmTOR阻害が、加齢による虚弱から加齢に伴うサルコペニアにいたるまで、さまざまな適応症におけるアンチエイジング臨床試験で広く探索されています(表3)

 

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表3 - mTOR阻害によるアンチエイジング臨床試験のハイライト。

アンチエイジング戦略としてのセノセラピー

セノセラピーとは、老化や年齢関係の病態と関連付けられている細胞老化に対して、それを明確に標的とした潜在的な治療薬や手法を開発することを指します。 現在、様々なセノセラピー戦略が研究中です。 特に画期的な薬理学的戦略として、セノリティックスの使用が挙げられます。これは、複数の加齢関連疾患の原因となる老化細胞を選択的に除去できる低分子化合物です。 老化細胞をこのようにして標的にする方法は、すでに臨床試験で評価中になっています(表4)

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表4 - セノセラピーアンチエイジング療法の臨床試験のハイライト。

アンチエイジング戦略としての細胞のリプログラミング

細胞レベルで、時計の針を戻すことは可能なことでしょうか。 細胞のリプログラミングは、まさしくそれを行おうとするもので、最終分化した成熟細胞を人工多能性幹細胞に変換します。 この方法で細胞をリプログラミングすると、ミトコンドリア機能不全やテロメア短縮、エピジェネティクスの変化、ゲノム不安定性、細胞の老化など、いくつかの老化の特徴を効果的に改善できるようになります。 研究はまだ初期段階にあるものの、この手法は前臨床モデルでは有望視されています

高齢化社会の課題に真正面から取り組むことで、アンチエイジング研究は、人々の老いの在り方を変え、わたしたちの全般的な健康を向上させ、より健康で活気ある国際社会を育む可能性を秘めています。

この有望でダイナミックなアンチエイジング研究分野についてさらに詳しく知るには、弊社の最新ジャーナルをこちらでご覧ください。

 

 

特許調査 - 高度な検索で効率を向上させよう

Carousel Workflow

現在の情報化時代においては、研究者や法務チーム、そして企業にとって、包括的な特許調査は極めて重要です。 タイムリーかつ費用対効果の高い方法で関連文献を参照できなければ、残念な結果を招きかねません。 とは言え、徹底的な特許調査を行うのは困難で時間がかかります。特にリソースが限られている場合はなおさらです。 幸い、知的財産(IP)検索用に設計された高度なツールやテクノロジーを使えば、この負担は軽減され、また効率も向上します。 本稿では、さまざまなツールや戦略を活用することで、包括的な特許調査と、特許に関するより良い洞察の獲得を加速させるための以下のコツを解説します。

  • アドバイス1 - 専門家が精選した包括的なデータベースを使用する。
  • アドバイス2 - AIツールや精密検索技術を用いて検索方法を強化する。
  • アドバイス3 - 特許ファミリーの検索を最適化する。
  • アドバイス4 - 新規の特許出願や既存特許の変更に関するアラートを設定する。
  • アドバイス5 - 知的財産や自組織の専門分野に精通したパートナーと協働する。

アドバイス1 - 専門家が精選した包括的なデータベースを使用する

知財リサーチャーは、検索の包括性を確保し、関連する情報を確実に捕捉するため、一般的には複数のデータベースを対象に検索を行います。 検索結果は、専門分野、文献網羅範囲、そしてインデックスの付け方における差異によって変わってきます。 複数のデータベースを横断的に検索する強力な検索方法を用いれば、包括性を高め、結果セットを理解し、重要な文献を見逃すことなく必要な情報を得られるようにクエリを絞り込めるようになります。

CASができること 

CASでは、世界有数の出版社やデータベースが提供するコンテンツの包括的なコレクションを、単一のプラットフォーム、CAS STNext®としてサーチャーに提供しています。

CAS STNextには、科学者により精選された信頼性の高いCASの化学コンテンツをはじめ、特許情報および特許全文の包括的なコレクションや、化学や生物医学、薬学、知的財産そして工学の分野を網羅する130以上のグローバルなデータベースが統合されています。

サーチャーは、付加価値が付いたデータベース、フルテキストのデータベース、特定のテーマや機能に特化したクラスターを活用することで、それぞれの要件に合った包括的な検索方法を確立できます。

CAS STNextのユーザーは、CASが収集して精選したデータベースも利用できるため、精密検索が可能になっています。 例えば、化学の知的財産を調査する際、特定の分子に絞って検索することもあるでしょう。 しかしその際、マルクーシュ構造の特許請求項に隠された物質を考慮に入れているでしょうか。 知的財産を検索する際は、マルクーシュ構造を考慮に入れ、また十分に理解する必要があります。これは、一般的な省略記法の一種で、多くの構造的に類似した物質を簡潔に記述するために使用されるものです。

一般的な化学構造検索を行うと、異なる物質が何千もヒットしますが、検索しようとしている物質と正確に一致するのは一部に過ぎません。 特定の化学物質のデータベースに対して広範かつ一般的な検索を実行するときは、同一の化学物質に一致する結果のみが返されるため、マルクーシュ構造でカバーされる重要な特許請求項を特定できません。 CAS STNext内のツールを使用すれば、130万件以上のマルクーシュ構造を検索することができます。

アドバイス2 - AIツールや精密検索技術を用いて特許調査の側面を強化する

EPOによると、包括的な特許調査には、179のデータベース内の13億件の技術レコードが使用され、毎月の特許検索で約6億件の文献が参照されています。 そこで、最新で徹底した特許検索を可能にするソリューションが必要とされています。 高度な検索プラットフォームが利用可能でも、そのデータベースの機能は制限されています。 結局、包括的な検索を行うには、検索に多くの時間を費やすしかないのです。

AIアルゴリズムは、関連性のある結果なのに今まで見逃されていたかもしれないものを活用するなど、検索方法の側面を補強することで、効率を向上させることができます。

CASができること 
CASでは、独自にAI強化された先行技術検索技術を、CAS STNextにて提供しています。 弊社独自の特許類似性エンジンにより、指定された特許文献を開始点として、それ以前に発行された関連特許および非特許文献のリストが作成され、元の検索では登場しなかった洞察が提供されます。

CASのAI支援機能の例として、以下が挙げられます。ブラジルのNational Institute of Industrial Property(INPI)との提携により、CASは10個でセットになったAIベースアルゴリズムを開発しました。それらにより、高精度に順序付けられた先行技術の検索結果の統合リストが作成されました。 ブラジルINPIは、このようにAIベースのアルゴリズムを検索ワークフローに組み込むことで、特許検索の効率を次のように向上させることができたのです。

国内特許申請の処理の77%において、検索に要する時間が短縮された。 
この処理のうち29%は、AIによって補完された検索結果外の調査が不要だった。

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アドバイス3 - 特許ファミリーの検索を最適化する

特許ファミリー内の関連特許は、異なる管轄区域や地域で出願されたとしても、優先権出願(基本特許)によって結び付けられています。最初に特許出願されたものが、そのファミリーの優先日になり、関連特許のクレームと仕様の基礎となります。

特定の特許ファミリー内の関連特許の領域と適用範囲を理解することで、特許権者、特許申請者、使用許諾取得候補者は、ライセンスを求めるべきか、特許の有効性に異議を唱えるべきか、そして長期の研究開発イニシアチブにリソースを配分するべきかなどについて、十分な情報に基づいた意思決定を行うことができるようになります。 ただし、特許ファミリーの完全な調査には時間がかかり、困難も伴います。 これは、複数の管轄区域にまたがる出願の複雑さをはじめ、複数データベース間のインデックスでの不一致、言語の壁、そしてそのイノベーション自体が科学的に複雑であることなどに起因します。

ただでさえ複雑なこのタスクの難易度をさらに高めているのが、請求項におけるばらつきです。 一般的には、特許出願で最初に提示される請求項は、特許ファミリー内のすべての関連特許で同一です。 ただし、出願人と特許庁とでやりとりする審査過程において、審査官からの異議に対応するため、あるいは先行技術を克服するために、請求項が修正されたり、狭められたりすることはあります。 その結果、同じ特許ファミリー内の関連特許の請求項でも、審査後は互いに異なるものになる場合があるのです。

こういった課題を克服するため、特許サーチャーは、往々にしてキーワード検索、分類検索、引用文献検索など含む、複数の検索テクニックを組み合わせます。 また、特許の検索で利用可能なデータベースや検索ツールのほか、さまざまな管轄区域における特許法や規制にも精通している必要があります。 さらに、特許ファミリー内の関連特許をすべて特定できるよう、特許サーチャーは弁理士や技術専門家と協力することもあります。

CASができること

CAS STNextは、世界有数の特許ファミリーデータベースから信頼性の高いデータを提供します。そして、包括的な検索を確保するため、以下の機能も提供します。

  • マルチファイル検索機能
  • 簡単なコマンドで、該当特許と関連特許を含む、追加の特許ファミリーのレコードを検索
  • 操作しやすい画面による、特許出願内の請求項間の関係性を示す概要

CAS STNextでの特許検索に関する詳細は、こちらをご覧ください。

アドバイス4 - 新規の特許出願や既存特許の変更に関するアラートを設定する

米国特許商標庁によると、2020年に米国で出願された特許は646,244件にのぼります。 特許サーチャーは、投資市場の拡大や新たな競合相手への対応の必要性を示す革新的な進歩を見逃さないよう、新しく公開された特許文献を常に把握しておく必要があります。

高度な検索ツールに、検索条件に一致する新しいエントリーが追加されたらアラートを発信する機能があれば、特許の現状を常に把握し、反復的な検索プロセスを減らすことができるようになります。

CASができること 
STN IP Protection SuiteTMのソリューションには、保存されたクエリと一致する関連結果が登場したらアラートで通知するカスタムアラート機能があります。

さらに、STN IP Protection Suiteの一部であるFIZ PatMonでは、以下などの活動に対してもアラートを発信する機能があり、より効率的な特許の監視ができるようになっています。

  • 特許審査プロセス全体を通しての特許出願
  • 特許の有効性の変化
  • 国内または他の国での競合特許の登場
  • 関連特許の異議申し立てや取り下げ
  • 特定の国における特許付与

こういった機能により、組織内の全ユーザーが自分の設定した検索条件でカスタマイズされたアラートを簡単に受け取れるようになり、その結果、時間のかかる手作業による特許チェックの必要性が軽減されます。

アドバイス5 - 知的財産や自組織の専門分野に精通したパートナーと協働する

進化する知的財産検索の需要に対応し続けるのは、負担が重くなりがちです。 ここで遅れが発生すると、将来の投資決定に影響を与える競合他社の活動を見落としたり、会社の業績に影響を与える重要な文献を見落としたりすることになりかねません。

そんなときは、同じ業界の専門サーチャーと提携することにより、必要としているコンテンツや最も効率的に検索するツールにアクセスして、知的財産検索のニーズに対応した効率的な支援が得られるようになります。さらに、トレーニングや専門知識を通して、すき間があればそれを埋めることで、成功を確実にすることができます。

CASができること
CASのチームは、知的財産やさまざまな科学分野において、専門的な技術的知識を有しています。

弊社のチームなら、他者では不可能な情報も明らかにすることができます。

貴組織の検索ニーズには、是非CASとの提携をご検討ください。包括的かつ詳細な特許調査の実現をお約束します。

まとめ

  • 知的財産検索を実施し、最新の動向を常に把握することは、投資や新たな競合相手に対する意思決定を左右するため、あらゆる組織にとって不可欠です。 特許調査の効率を改善させるには、以下の方法があります。
  • 専門家が精選した包括的なデータベースを使用することで、複雑なデータの横断を簡素化し、コンテンツのソースの見落としをなくす。
  • AIを活用した検索サポートと他の精密検索ソリューションを組み合わせた方式を採用することを検討する。 AIは関連イノベーションを認識できるだけでなく、追加の用語や特定事項も識別できるため、より強力な検索方法を構築するのに役立てることもできる。
  • すべての管轄区域の類似特許を検出し、グローバルな網羅範囲を確実に把握することで、特許ファミリー検索を合理化する。
  • 新しいエントリーがクエリと一致する際に通知で知らせる高度な検索ツールを使うことで、常に最新の特許出願状況を把握する。 そうすることで、反復的で面倒な検索が不要になる。
  • 知的財産や貴組織と同じ業界の専門家と協働することで、特許調査のプロセスを合理化、強化する。 
     

STN IP Protection Suiteに関する詳細は、こちらをご覧ください。

(エグゼクティブサマリー)アンチエイジング治療の今後の展望

CAS Science Team

Senior couple enjoying the views on a mountain hike

幹細胞治療やヒアルロン酸から、臨床試験パイプラインにある医薬品の新たな波まで、アンチエイジング治療は実に種類が豊富です。 これらの新しいアプローチは、古くからある食事や運動、抗酸化物質などと比較して、どう違うのでしょうか。 本サマリーでは、新たなトレンド、新しい研究やビジネスチャンスに関して、特に重要なポイントをまとめて紹介します。 アンチエイジング治療の状勢に関するさらに詳細な分析については、最近発表されたジャーナルをこちらでご覧ください。

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科学特許調査におけるパートナーシップ - 重要性と方法

Gain a competitive edge with IP Insights from CAS

知的財産権を保護しながらすばやく技術革新を行い、そして健全なビジネス判断を行うためには、徹底的な特許調査は不可欠です。  

特許調査には、以下のメリットがあります。

  • 新たなビジネスチャンスの特定 特許の現状分析を実施すると、貴組織が従事する分野におけるすき間や、特許が付与されていない領域を特定できるようになります。 これにより、どこに投資を集中させるべきかがわかるようになり、利益の最大化につながります。
  • 競合分析の強化 競合他社の活動を常に把握していれば、関連するイノベーションを早期に発見し、どの市場、地域、そしてイノベーションを追求すべきかの判断ができるようになります。
  • 新たな脅威に対する防御 知的財産アセットを保護し、競争力を維持するには、外部環境の継続的なモニタリングは不可欠です。 多くの場合、企業は競合他社が保有している特許やそれに関連する活動は把握しています。ところが、その競合他社が特許の取得に動いていなくても、実際は貴組織の既存の知的財産侵害にあたるようなイノベーションを追及していることもあります。そういったことまで含めて調査をする戦略は、往々にして欠けているものです。

イノベーションのペースが加速している今、特許調査のニーズも進化しています。 競争の勢力図がますます複雑さを増している中、事業戦略や研究開発戦略に必要な情報を得るためには、包括的で信頼できる知的財産の洞察が不可欠となっています。

同じ業界のサーチ専門家と提携し、そして貴組織のイノベーションに見合うような、洗練されたツールを利用することで、知的財産情報を貴組織全体でアクセスそして活用できるようになります。

その重要性 - 知的財産と研究開発との間に、調和と効率化をもたらす

科学分野における徹底的な特許調査と現状分析は、相当な時間とリソースを要します。これは、イノベーションの量、速度、複雑さに加え、テクノロジー自体も急速に進化しているためです。  

企業における知財の検索方法に穴があったり、または不完全なデータソースに依存したりすると、重要な投資や研究開発の意思決定に役立つ情報を見逃してしまう可能性があります。

知的財産検索の包括性と信頼性は、それを行うアナリストの専門知識や余力、そして検索ツールに制限を受けてしまうことが多々あります。 こういった制限は、コストがかかる遅延や、研究開発と知的財産戦略との間にギャップを生じさせてしまいます。 そこで、その分野で実績のある専門家と提携することで、知的財産調査活動を徹底的、一貫的、効率的に行うために必要な情報を確実に入手することができます。

課題はもうひとつ、研究開発のレベルでも存在します。研究者は、往々にして知的財産検索にかける時間やアクセス、または経験が不足しているということです。 機会を最大限に生かし、知財イニシアチブの合理化を図るためには、研究開発チームのメンバーは、組織内特許アナリストの洞察にアクセスできるようになっており、また知財に関するインサイトを研究開発サイクルを通じて活用できるようにしてくれるツールも使えるようになる必要があります。

そこで、信頼できるパートナーは以下のサービスを提供します。

特許の現状調査の加速化 化学やライフサイエンスの分野は絶え間なく変化しているため、ビジネス上の意思決定のために市場の勢力図を見極めるには、時間は重要です。 貴組織の技術、用語、そして業界に精通した知的財産検索の専門家パートナーと協働することで、この調査プロセスがスピードアップします。

このパートナーには、科学検索と知財検索のために設計された包括的なコンテンツとワークフローソリューションがあること、そしてそれを使って包括的な検索の遂行と実行可能な洞察が形成できることが望ましいでしょう。

研究開発の支援 パートナーは、貴組織が従事する分野でのすき間、リスク、または機会などに関する洞察を貴組織が活用できるようにすることで、有望な機会を特定できるよう支援するべきです。 さらに、信頼できるパートナーは、より効果的に検索を準備し、結果セットを利害関係者と共有し、変化を先取りできる監視プログラムを設定したりなどの支援を行うことができるようでないとなりません。

貴組織のワークロードの軽減 特に化学とライフサイエンスの分野では、包括的で効率的な検索を実行するのは困難です。 信頼できるパートナーと一緒であれば、能力や専門分野のギャップに対応しなければならないときに、信頼できる専門知識を得ることができます。 パートナーは、貴組織に既に存在している特許サーチャーと協力して、貴組織側が手薄になることなく取り組みを迅速化させることができないとなりません。

その方法、第1段階 - 理想的な特許調査パートナーとは何かを理解する

適切なパートナーと一緒であれば、自信をもって研究開発の取り組みに必要な調査を実行できるようになります。

理想的なパートナーとは、以下であることが望ましいでしょう。

貴組織の研究分野の専門家であること そうすれば表面的なレベルだけでなく、その分野で価値の高い洞察を得ることができます。

ソース情報の包括的なコーパスに接続させてくれること 知的財産検索の価値は、その情報のソースと、関連性のある結果を的確に絞り込む能力に左右されます。 理想的なパートナーは、この作業の重要性を理解したうえで、広範囲にわたる関連情報のグローバルなコレクションにアクセスできるよう支援してくれないとなりません。

科学知的財産検索を念頭にツールを設計・提供すること 専門知識やコンテンツにアクセスできるだけでは、達成できることにも限りがあります。 まず、そのコンテンツにアクセスするのに使用する技術こそ、特許調査の効率を大幅に向上させることができる部分なのです。 理想的なパートナーは、貴組織のワークフローを強化し、最新の関連コンテンツへのアクセスを可能にし、効率的で徹底的な検索と複数チーム間の洞察の共有を可能にする機能や性能を備えた知的財産検索ツールを提供する必要があります。

その方法、第2段階 - 決めてしまう前に質問する

特定のパートナーとの提携や、特定の特許調査用ツールを決めてしまう前に、最良の結果を得るためには、必ず以下の質問をするようにしましょう。

  • どの特許情報と非特許情報ソースやデータベースにアクセスできるようになるのか。 それは自分たちの科学・技術分野では十分に豊富で広範囲なものなのか。  
  • パートナーから提供されるツールやサービスは、主要利害関係者に特許調査の結果を伝える際に、どう役立つのか。   
  • 自分たちのイノベーションの機密保持のためには、どういった対策が取られているのか。

知財調査のための理想的なパートナーをお探しなら、是非CASをご検討ください。弊社は、貴組織が求める能力とツールを提供します。

CASなら競争で優位に立てます

確実に包括的な検索を実行する
  検索結果の信頼性は、アクセスできるデータの信頼性に依存します。 CAS STNext(STN IP Protection SuiteTM内のソフトウェア)なら、特許アナリストは、強力な精密検索・分析ツールと共に、最も包括的でグローバルなデータベースのコレクションと、科学者が収集したコンテンツおよび特許情報を活用することができます。

医薬品やライフサイエンス、化学工学、機能性材料、そしてパーソナルケア製品など、複数の領域にわたる知財検索は、CAS STNextを利用することで、より信頼性が高く、完全で、また洞察に満ちたものになります。

CASのように科学と知財の知識を持つパートナーでチームの専門性を拡張すれば、知識のギャップを埋めることができます。それにより、特許調査の戦略を立てるときに役立つだけでなく、貴組織の科学分野特有のニーズを満たす特許調査ツールやデータコレクションを開発することもできます。

また、STN IP Protection Suiteのユーザーは、特許の準備・出願、訴訟、知的財産の金銭的価値の設定、競合分析、製品と安全性のモニタリング、ホワイトスペース分析、そしてその他の特許プログラム活動のための検索方法の管理経験を持った、信頼できる知的財産検索の専門家の支援も受けることができます。

特許調査の結果の検索とレビューにかかる時間を短縮。貴組織の業界向けに構築されたツールやデータベースには、コンテンツや検索、そしてワークフロー機能が含まれているので、最初の検索から意思決定までが加速化されます。

例えば工学分野の発明を分析する場合、粘度、電気伝導性、光度などの特性は、しばしば範囲によって表されます。 このため、関連特許の精密な検索の実行は困難になります。 STN IP Protection Suite内のCAS STNext の数値特性検索では、必要に応じて単位も変換したうえで、数値や範囲を細かく入力することができます。 このように特定技術に特化した高度な検索機能を備えたツールにより、関連性のある情報を見つけるプロセスが迅速化します。

グローバルな特許状況を効率的に監視する
訴訟や侵害は、可能な限り回避、予測し、必要な場合には効果的に対処したいものです。 STN IP Protection Suite™の一部であるFIZ PatMonなら、業界における特許の変化を常に把握することができ、競合他社の動向を追跡して知的財産ポートフォリオを保護することができます。 包括的なモニタリングから具体的なフィルタリングまで、その高度なアラートオプションにより、新たな出願や活動の動向を注視できます。

CASなら、イノベーションや研究開発、または知財保護に関する重要な意思決定を行う際に、必要な情報にアクセスできるという安心感が得られます。

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